夢の硝子玉

ディーラスを目指して

３６

「フレイザー…俺はそんなこと、もうなんとも思っちゃいない。
そりゃあ、その時はショックが大きくて……絶望して死のうとしたよ。
だけど、俺には死ぬことさえうまく出来ずに何度も失敗して、中途半端に痛い想いをしたから今度は死ぬのが怖くなって、森の中に隠れてずっと泣くことしか出来なかった。
そのうちに、俺は自分の身体がどんどん衰弱していくのを感じた。
ほとんど食べるものも食べてなかったから当然なんだけど、おかしなことにあんなに死にたいと思ってたはずなのに、死が近付いて来るのを感じると、なんだかそのまま死んでしまうことが妙に悔しく想えるようになって来たんだ……
俺が死んだってあいつらはきっと何とも思わない…いや、死んだ事にさえ気付かれないかもしれない。
そうだ、こんな所で死んだら、あいつらだけじゃなく誰にも気付かれることもなく、俺がなぜどんな想いで死んだのかもわかってもらえない…そう思ったらものすごく悔しい気分になったんだ。
 皮肉なことに、そんな想いやあいつらへの復讐心が俺に生きる希望を与えてくれたんだ。
だけど、現実に俺は非力だ…俺の力では何も出来ない。
どうすればあいつらに復讐出来るかを俺は考えた。
そんな時に、俺はおじいちゃんから聞いた願い石の話を思い出したんだ。
 願い石をみつければ、あいつらに復讐することだって出来る！
そう思いついてから俺は死ぬことを考えなくなった。」

 「ジャック……」

フレイザーにとってジャックの話は衝撃的なものだった。
 考えたこともなかった程悲惨な過去を持つジャックにかける言葉がみつけられず、フレイザーにはただ小さな声で彼の名を呼ぶことしか出来なかった。