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ディーラスを目指して
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「フレイザー、これ…セリナにもらったんだ。」
ジャックは袖をまくり、腕にはめた緑色の石の腕輪をフレイザーの前に差し出した。
「へぇ…綺麗な腕輪だな。」
ジャックは、はにかんだようなどこか困ったような、フレイザーにはその真意がよくわからない複雑な表情で微笑んだ。
「なくしたら困るから前はつけてなかったんだけど…最近はつけてるんだ。
なんでも、素直になれる石なんだって…」
「そうなのか…じゃ、おまえが変わったのはその石のおかげかもしれないな。」
「俺はまだ素直になったなんて思ってないよ。」
「……初めて会った頃に比べたら、別人みたいに素直になってるさ。」
「はっきり言うんだな…」
ジャックは苦い笑いを浮かべ、フレイザーもそんなジャックを見て小さく微笑んだ。
「……フレイザー…
俺の母さんは早くに死んだって話したこと、覚えてるか?」
「あぁ、覚えてるよ。
それからは炭焼き小屋の爺さんが育ててくれたんだろ?
だけど、その爺さんも死んでしまってそれでおまえは寂しくなって町に出た。」
「……多分、あの頃の俺は今とはまさに別人で…馬鹿みたいにお人良しだったんだ。」
小さな声で呟いたジャックの顔にたとえようのない程の哀しさを感じ、フレイザーは心がざわめき出すのを感じた。
「ジャック……あの、話したくないことだったら話さなくて良いんだぞ。」
「……俺は大丈夫だよ。
それとも、フレイザーは聞くのがいやなのか?」
「そうじゃない。
おまえが大丈夫なら、俺はどんなことだって聞かせてもらうよ。」
「ありがとう…」
ジャックはゆっくりと話し始めた。
山奥の炭焼き小屋で、老人とそして母と自分の三人で過ごした短かったけど穏やかな日々のこと…
母親が亡くなってからの老人との暮らしやひとりぼっちになってからのこと……
時には辛そうな顔で…また時にはやわらかな表情で、ジャックは自分の身の上についての話を続け、フレイザーはその話に真剣に耳を傾けた。
ジャックは袖をまくり、腕にはめた緑色の石の腕輪をフレイザーの前に差し出した。
「へぇ…綺麗な腕輪だな。」
ジャックは、はにかんだようなどこか困ったような、フレイザーにはその真意がよくわからない複雑な表情で微笑んだ。
「なくしたら困るから前はつけてなかったんだけど…最近はつけてるんだ。
なんでも、素直になれる石なんだって…」
「そうなのか…じゃ、おまえが変わったのはその石のおかげかもしれないな。」
「俺はまだ素直になったなんて思ってないよ。」
「……初めて会った頃に比べたら、別人みたいに素直になってるさ。」
「はっきり言うんだな…」
ジャックは苦い笑いを浮かべ、フレイザーもそんなジャックを見て小さく微笑んだ。
「……フレイザー…
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「あぁ、覚えてるよ。
それからは炭焼き小屋の爺さんが育ててくれたんだろ?
だけど、その爺さんも死んでしまってそれでおまえは寂しくなって町に出た。」
「……多分、あの頃の俺は今とはまさに別人で…馬鹿みたいにお人良しだったんだ。」
小さな声で呟いたジャックの顔にたとえようのない程の哀しさを感じ、フレイザーは心がざわめき出すのを感じた。
「ジャック……あの、話したくないことだったら話さなくて良いんだぞ。」
「……俺は大丈夫だよ。
それとも、フレイザーは聞くのがいやなのか?」
「そうじゃない。
おまえが大丈夫なら、俺はどんなことだって聞かせてもらうよ。」
「ありがとう…」
ジャックはゆっくりと話し始めた。
山奥の炭焼き小屋で、老人とそして母と自分の三人で過ごした短かったけど穏やかな日々のこと…
母親が亡くなってからの老人との暮らしやひとりぼっちになってからのこと……
時には辛そうな顔で…また時にはやわらかな表情で、ジャックは自分の身の上についての話を続け、フレイザーはその話に真剣に耳を傾けた。
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