夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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ディーラスを目指して

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 (ジャックの奴、えらく遅いな…)



ベッドに寝転び、窓ガラスの向こうに見える暗くなった空を見上げながら、フレイザーはおもむろに身体を起こす。



 (まさか…具合が悪くなってどこかで倒れたりしてないだろうな!?)



フレイザーはいやな胸騒ぎを覚えて立ち上がった。



 (あの馬鹿、無理ばっかりして…!)



フレイザーは、自分の想像に突き動かされるように、部屋を飛び出した。




 *



 (一体、どこにいるんだ…)



フレイザーは町を行き交う人々にジャックのことを聞いてまわり、診療所にも足を向けたが、ジャックらしき人物を見掛けたという者はいても、その後のは足取りについてはまるで手掛かりがみつからなかった。



 (診療所にいないってことは…まさか、どこか人目につかない所で苦しんでるんじゃないだろうな…
それとも、ジャックの事情を知らない奴が、あいつのことを女だと思ってかどわかしたんじゃ…)



フレイザーの脳裏には次々と悪い想像が浮かんでは消え、焦りと不安を感じながら今度は商店街の方へ走り出した。



 *



 「ほ、本当か?
 本当にここへ来たのか?」

 「あぁ、あんな真っ黒なフードをかぶったおかしな奴は、そうそういないからな。
 年はまだ十五~六で、身の丈はわしと同じくらいの奴だろう?」

 薬屋の店主の言葉に、フレイザーは何度も頷く。



 「そ、それで、そいつ、どこに行ったんだ?」

 「そこまではわからんよ。
なんでもうちの薬がよく効くってどこかで聞いたらしくって、傷薬を買いに来たんじゃ。
普通のものならあったのじゃが、あの子は傷跡を治す…消すというか、そういう効能のある傷薬がほしかったらしいんじゃな。
しかし、残念ながらその薬は今品切れだったんじゃ。」

 「それで、帰ったのか?」

 「いや、少しくらい残ってないのかとかしつこく訊いてきたよ。
だが、本当にないんじゃ。
先月、山に薬草を採りに行ってくれていた店の者がやめてしもうてな。
材料を採りに行ってくれる店員を探してるんじゃが、まだみつからんのじゃ。
そのことを言うたら、それはどこの山だと訊くんで…」

 「教えたのか!?」

フレイザーは身を乗り出し、店主はフレイザーの気迫にたじろいで後ずさりした。



 「た、確かに教えたのは教えたが…」

 「まさか、あいつ…」

 「まさかって……あの子が薬草を採りに行ったとでも言うのか?
そんなことはなかろう。
第一、あの子にはどれがその薬草かわからんじゃろうし、あの山には魔物が出ることも言うたんじゃぞ。
そんな所へ行く筈が…」

 「どこなんだ!
その山は!」

フレイザーは苛立ち、力一杯カウンターを叩いた。

 
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