夢の硝子玉

ディーラスを目指して

３

＊



 「ここか…やっと着いたな。」

 馬車から降りたラスターは両手を薄暗くなった空に向け、大きく伸びをする。
 三日の後、馬車はセリナがあたりを付けた町に着いた。
 地図の様子から寂れた町だろうと皆は考えていたが、それなりの賑わいはある町だった。



 「ここで占い師の情報が聞けなくても、一応、ヘイレンまでは行くんだよな？」

ラスターは、ダルシャの方を向いて不敵な笑みを浮かべた。



 「……ま、そういうことだな。
とりあえず、宿に行って食事でもしよう。」

 町の者に話を聞くと、その町には宿屋は二軒あるとのことだった。
 通りをしばらく歩くとやがて一軒目の宿屋がみつかり、四人はそこへ泊まることにした。
 各々の部屋に荷物を置いた四人は、夕食のため、すぐに食堂に集まる。




 「皆、疲れただろう？
だが、今はゆっくりはしてられん。
 占い師より先に石をみつけなきゃならんからな。
せめて、栄養でも採っておいてくれ。」

 「そうだね。
 絶対に、占い師より先にみつけなきゃね。
 頑張らなきゃ！」

エリオットはそう言って、テーブルの上の肉料理を頬張った。



 「ここにそれらしき奴が来たかどうか聞いてみよう。」

ラスターは、食堂の従業員に声をかけた。
しかし、四人はそこで困ったことに突き当たった。



 「それは、どのような方ですか？」

その質問に答えられる者はいなかった。
なぜ、その男の風貌について尋ねて来なかったのかとダルシャはラスターに詰め寄られ、占い師の名前が「ブライアン」だということだけはなんとか思い出した。
しかし、ブライアンという名の泊り客はここ最近はいないということだった。



 「……ほら、見ろ。
やっぱりそんな奴いないじゃないか。
どうせこんなことだろうと思ったよ。」

ラスターは勝ち誇ったような顔で、ゆっくりと頷く。



 「そ…そうだ！
この町にはもう一軒宿屋があるって言ってたじゃない。
きっと、ブライアンはそっちに泊まったんだよ！
うん、きっとそうだよ！ね、セリナ！」

エリオットはセリナに同意を求めたが、セリナは曖昧な表情を浮かべるばかりだった。



 「よし、それならもう一軒の宿屋に聞きに行こう！」

 「……行くなら、食事が終わってからにしたまえ。」

ダルシャは不機嫌にそう言い、ラスターは楽しそうに肩をすくめて笑う。
それから食事が済むまで誰も口を開く事はなかった。