夢の硝子玉

四つ目の大陸

４１

＊



 「ねぇ、エリオット…あなた、なにか私に言いたいことがあるんじゃないの？」

 「えっ！？」

 目を丸くして驚くエリオットのその顔は、セリナの言葉が図星だということを物語っていた。



 「ど、どうしてわかったの？」

 「そんなの誰だってわかるわよ。
フレイザーの着替えを取りに来たって言うのになかなか帰らないし、その上、私の傍から離れないじゃない。
さっきから、何か言いかけては『なんでもない』ばっかりだし、誰が考えたっておかしいとわかるわよ。
なんだかわからないけど…さぁ、さっさと言っておしまいなさいよ。」

 「じ、実は……」

セリナの厳しい口調に押され、ようやく口を開きかけたエリオットだったが、話す寸前でまたその口をつぐむ。



 「エリオット！」

 「わ、わかったよ。話すよ！
……でも、これは絶対に秘密だよ。
 絶対に他の人には言わないでよ！」

その言葉にセリナは険しい顔つきで頷き、片手を胸の上に置いた。
これが、この世界の「約束」を意味する仕草であることをエリオットはすでに理解していたため、同じ仕草をセリナに返した。



 「……ねぇ、セリナ。
おかしなことを聞くけど、セリナは誰かを好きになったことはある？」

 「もしかしてあなた、誰かを好きになったの？」

エリオットは素早く首を横に振る。



 「違うよ。そうじゃない。
ねぇ、セリナ…」

 「私は普通の人とは違う…
誰かを好き来になる状況がなかったから、本気で誰かを好きになったことはないわ。
かっこ良いなとか優しいなとか…そういう感情ならもちろんあるけど…」

 「その相手は、もちろん……男の人だよね？」

 「当たり前じゃないの。
どうしてなの？」

 「あのさ、セリナ…」

そう言ったっきり、エリオットの言葉が再び途切れた。



 「もうっ！エリオットったら、また！
 早く言いなさいよ！」

 「え…えっと……セリナ…同性を好きになるって…どう思う？？」

セリナに急かされ、エリオットは小さな声でおずおずと問いかけた。



 「同性を…？
そういう人も世間にはいるみたいね。
 私は別に悪い事だとは思わないわ。
 人を好きになる気持ちに良いも悪いもないと思うもの…」

エリオットはその言葉に神妙な顔つきで頷いた。