夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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四つ目の大陸

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「そ…そんなことが……」

エリオットは俯いたままで小さく頷く。



 「あの時…フレイザーにはその話をしてたんだ。
 次の日、僕らが酔い潰れたのもそのせいなんだよ。
フレイザーは、酒でも飲んだら少しは気が晴れるんじゃないかって気を遣ってくれて…
それで、二人共飲み過ぎてあんなことになっちゃったんだ…」

 「……なんで……エリオット、そんな話をなぜ俺に…」

 「だって…君が誤解してるから。
 誤解を解くには、本当のことを話さなきゃいけないと思って…」

エリオットは小さな声でそう答え、目尻の涙をそっと拭った。



 「ごめん…辛い事、話させて…本当にごめん…
で、でも、それは仕方ないことだったと思う!
エリオットが悪いわけじゃない!」

 「ありがとう…僕なら大丈夫だよ。
このことは僕自身が乗り越えないといけない問題なんだ。
……それにしても、君は本当にフレイザーのこと、大切に思ってるんだね。」

 「え……?!」

エリオットの言葉に、ジャックの顔は熱く火照り心臓は早鐘を打ち鳴らす。



 (ま、まさか…エリオットは気付いてるのか?
それとも、セリナが……!)



 「お……俺……」

 「……まるで、本当の兄さんみたいに思ってるんだね。」

エリオットは、そう言ってジャックに明るい笑顔を見せた。



 「え……う、うん、そうなんだ……」

 咄嗟にそう答え、ジャックはエリオットから顔を背けた。



 (どうしよう…エリオットはあんな大きな秘密を打ち明けてくれたのに…
 ……やっぱり俺も……)



 「あ…あの…」

 「……そろそろ帰ろうか?
あんまり遅くなったらフレイザーが心配するかもしれないからね。」

 「え…?
あ…あぁ、そうだな…」

ジャックは言いかけた言葉を飲みこんだ。
エリオットの胸に隠されていた重いものを聞いた事で混乱しており、自分の秘密を打ち明けることにもまだどこか躊躇いがあったのだ。
ただ、フレイザーとエリオットの関係がなんでもないということは納得出来、そのことでジャックは自分の心の中が晴れやかになったのを感じていた。



 (どうしてなんだろう…
フレイザーとエリオットがただの友達だとわかったら、なんでこんなにすっきりしたんだろう…
まさか、俺は本当にフレイザーのことを…?
いや…そんなことあるもんか!
でも、だとしたら、この気持ちは一体…)

ジャックは自分の心が理解出来ず、渦巻く戸惑いに唇を噛み締めた。
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