夢の硝子玉

四つ目の大陸

３４

「そ、それに、フレイザーは、自分の身を呈して俺のことを守ってくれたし…
 ……信頼出来る人だと思うんだ。」

 「……そうだね。
 彼は、嘘を吐いたり人を裏切るようなことはない人だと僕も思うよ。
だけど、内面ならともかく、外見で好かれるっていうのがどうもね…」

 「でも、性格は顔に出るって言うじゃないか。
きっと…見る人が見ればわかるんだと思う。」

エリオットは、俯き加減にどこか恥ずかしそうに話すジャックの顔をじっと見つめた。



 「な、何なんだよ！」

 「君は、フレイザーのことを本当に想ってるんだね。」

 「そ、それは、フレイザーが俺のせいで怪我をしたから、恩を感じてるだけだ！
そ、そんなことより、おまえこそ、そんな話を聞いてもなんとも思わないのか？」

 「なんとも…って…だから、信じられない話だなって…」

やけに興奮し、落ちつきをなくしたジャックとは裏腹に、エリオットは淡々と答えた。



 「そうじゃない！！
おまえ…その、フレイザーとは……ただの友達じゃないだろ……」

 「ジャック…それは誤解だって！
 僕とフレイザーは君が考えてるような関係じゃないよ。」

 「嘘言うなよ！
 以前にもフレイザーが朝までおまえの部屋にいたことがあったじゃないか！」

 「だから……それは……」

その時の事を即答するには込み入った事情がありすぎて、エリオットは説明を言いよどむ。



 「認めたらどうなんだ！？
それとも、フレイザーには気持ちはない、ただの身体だけの付き合いだともいうのか！？」

エリオットのそんな心情も知らず、ジャックの苛立ちはさらに激しさを増していく。



 「ジャック…僕達の間にそんな関係なんてないよ。
 僕は、フレイザーのことは本当に友達としか思ってないんだから。
ねぇ、ちょっと落ちついてよ。
 君、どうしてそんなに…」

 「俺は…フレイザーには大きな恩がある！
フレイザーは…俺を助けてくれた…
だから、フレイザーを傷付けるような奴は絶対に許せない！
 相手が女だって、それは変わらない！
だから……」

 「……ジャック…外に出ようよ。」

エリオットは、静かな声でそう言うと、ジャックの腕をそっと掴んで食堂の外へ連れ出した。