夢の硝子玉

四つ目の大陸

８

＊



ダルシャとの賭けに勝利を確信しているためか、ラスターは鼻歌を歌いながら一人だけ少し先を歩いていた。
それとは裏腹に、難しい顔をして歩いているのはセリナだった。
 自分の主張が聞き入れられなかったことで、セリナの表情はいつになく強張っていた。



 「……なんだか、おかしなことになっちまったな。」

 「そうだね…まぁ、ラスターの機嫌が良くなったのは良かったけどね…」

 「あ……！」

エリオットの言葉に、フレイザーが何かを思い着いたように短い声をあげた。



 「……フレイザー？どうかしたの？」

 「エリオット、すまないがダルシャとちょっと先に行ってくれないか？
 詳しいことは後で話すから…」

 「え…？
……わかったよ。
ダルシャを連れて先に行けば良いんだね？」

エリオットは、詳しい事情を知らされないまま、フレイザーの言う通りダルシャの傍に駆け寄るとそれとなく話しかけ足を速めた。



 「フレイザー、なにかあるのか？」

 「おまえ、セリナに謝りたいって言ってただろ？
 良いチャンスじゃないか。
 今のうちに話して来いよ。
 町じゃなかなか二人っきりになれることはないだろうし、早めに話しておいた方がこの先の旅もわだかまりがなくて良いだろ？
あ…あそこに森がある。
 俺は離れた所で待ってるから、あそこで話して来たらどうだ？」

 「あ……そうか…そうだな……でも、俺……」

ジャックは、フレイザーの用意してくれたお膳立てに感謝しながらも、突然のことに心の準備が整わないかのように戸惑った様子を見せた。



 「この期に及んで何言ってんだ！
こういうのは考えるより勢いだ！
さぁ、行って来い！
しっかり謝ってくるんだぜ！」

そう言うと、フレイザーはジャックの背中を景気良く叩き、セリナを追い越し駆け出して行く。
ジャックは一度大きく息を吐き、自分自身に気合いを込めると、足を速めセリナの傍に駆け寄った。