夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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「おい、止さないか!」

 「だって、こいつが…!」

ダルシャ達が駆け付けた時、ラスターがオスカーに後ろから羽交い締めにされていた。
ジャックの片方の頬が赤くなっている所から、その場で何があったのか、だいたいのことは四人にも推測がついた。



 「こいつは縛られて何も出来ないんだぞ。
そんな相手を殴る奴があるか!」

 「……わかったから、離せよ!」

オスカーはラスターから手を離し、ラスターはふて腐れて部屋の奥へ歩いて行く。



 「……ダルシャ、今夜、俺はこいつと宿屋に泊まるよ。
……良いかな?」

ダルシャは腕を組み、何かを考えるかのようにジャックの横顔をじっとみつめ、やがて静かな声で答えた。



 「……わかった。君に任せよう。
フレイザー、彼のことは頼んだぞ。」

 「ありがとう、ダルシャ!」

フレイザーはダルシャに礼を述べると、ジャックの縄を解き、まるで子供にするようにその手を繋いだ。
ジャックは特に抗う事もなく素直にそれに従う。



 「じゃ、また明日な。」

 「ジャック、今まではよく眠れなかったでしょう?
 今夜はゆっくり休んでね。」

ジャックはそれには何も答えず、いつものように片手でフードを深くかぶり、そっと俯いた。



 「さ、行くぞ!」

フレイザーに手を引かれ、ジャックはオスカーの家を後にした。




 *



 「……何してるんだ?
おまえ、ここんとこ何も食べてないらしいじゃないか。
 俺も今日は朝から馬車に揺られっぱなしで、ろくなもん食べてなかったからはらぺこなんだ。」

 部屋に運んでもらった食事を前にしても、ジャックはそれには手を着けようとしなかった。



 「……具合でも悪いのか?
それともどこか痛む所でもあるのか?」

 「……なぜ怒らないんだ?」

 「……なんだ、そんなことか。
それなら心配しなくても食事の後で怒ってやるさ。
それより、今は食事が先だ。
せっかくの料理が冷めたらもったいないだろ?
おまえが食べないなら、俺だけ食べるぞ。」

そう言って料理を口にするフレイザーの様子を目で追い続けるうちに、ついにジャックの手が料理に伸びた。
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