夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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 「そんなことがあったのか…
そりゃあ大変だったな。」

 「いえ…私は別に…
それより、オスカーさんはどうして私のことがわかったんですか?」

 「そうじゃないさ。
あいつのことは、前から気にはなってたんだ。
フレイザーが奴のことをすごく心配してたし、セリナに関心を示してるって聞いてたからな。
だから、万一、奴が宿屋に来たら知らせてくれるように宿屋の主人に頼んでおいたんだ。
あの風貌だからすぐにあいつがジャックだということはわかったらしく、主人が食事を食わせてる間にあそこの息子が報せに来てくれたんだ。
それで俺も駆け付けたわけなんだが、主人の話ではまるで宿屋に金を預けてあることを知ってるようだったということだったし、元々、素性のよくわからない奴だと聞いていたから、こっそり後をつけたんだ。
まともに尋ねても答えてくれないだろうからな。
そしたら、小屋の中におまえさんの姿をみつけて…驚いたよ。
まさか、おまえさんが捕まってるなんて考えてもみなかったからな。」

オスカーはそう言って、セリナの顔をまじまじとみつめる。



 「そうだったんですか…
オスカーさんのおかげで助かりました。
あのままだったら、私はジャックとジャーマシーに渡ってたと思います。」

 「ジャーマシーへ?
……そういえば、あいつ…金を見せて喜んでたな。」

 「ええ、ジャックは……」

 「ところでセリナ、腹が減ってるんじゃないか?
あいつ、宿屋でものすごい勢いで料理を食べてたらしいぞ。
おまえも食べてないんだろう?
 今、なにか作るから待ってな。
 話はそれからだ。」

 言いかけたセリナの言葉を遮り、オスカーは立ち上がった。
いつもならこんな時には決まって手伝うと言い出すセリナだが、さすがに疲れていたため、オスカーの好意に甘えることにした。
 柱に縛りつけられたジャックを少し可哀想に感じながらも、彼から解放されたことはセリナの気持ちを大きく安堵させていた。

 
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