夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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倒れたセリナを見て、ジャックは一瞬ハッとしたような表情を浮かべ、決まり悪そうに顔を背けながらセリナの身体を起こした。



 「すまなかった…」

 「……大丈夫よ。」

セリナも、ジャックの方には顔を向けないまま小さな声でそう返す。



 「……確か…願い石は大陸に一つしかないんだよな?
あんたが、ここの石を使ったっていうことは…ここにはもう願い石はないんだよな?」

セリナは、黙ったままで頷き、ジャックはそれを見て舌を打つ。



 「あんた、金はもってんのか!?」

 「いいえ。いつもダルシャが皆の必要なお金は払ってくれるし、私は小銭くらいしか持ってないわ。」

 「……畜生!」

ジャックは、腹立たしげに拳で地面を叩きつける。



 「ジャック…あなたは願い石を探してるんじゃないって言ったけど、それなら、なぜ私を…いえ、銀色の髪の女性を探してたの?」

 「……俺の願いを叶えてくれるって思ったから…」

 「あなたの願いを…?
でも、さっき、願い石を探してたわけじゃないって……一体、どういうことなの?」

ジャックは、セリナに背中を向け、小さな声で呟いた。



 「……船に乗る直前に、ある占い師に言われたんだ。
 俺の願いを叶えてくれるのは、銀色の髪の人間だって。
そして、俺を救ってくれるのは……いや、なんでもない。」

ジャックは話しかけた何かを不意に打ち消し、そして一呼吸置いてまた言葉を続けた。



 「俺も最初はそんなこと信じてなかった。
 銀色の髪の人間なんて見た事がなかったからな。
そんな者がいるなんてこと信じられなかった。」

 「……だけど、船の中でフレイザーと知り合って、そして私のことを聞いたのね?」

 「そうだ。
びっくりしたよ。
 俺は、今まで旅の途中で誰かと親しくなるようなことなんて一度もなかった。
 必要なこと以外は、ほとんど話すことさえなかった。
なのに、フレイザーは船酔いしてる俺にとても親切にしてくれて…
その上、銀色の髪の仲間がいるなんて言うんだからな。
それを聞いたら、急にあの占い師の言った言葉が信じられるような気がして来たんだ。
だとしたら、その仲間が俺の願いを叶えてくれるんじゃないかって…」

ジャックは、記憶を辿るようにゆっくりとそう話した。
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