夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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 「もう良いよ。
あなた達はお客さんなんだから、あっちで寛いでてちょうだい。」

 「そんなこと言わないで。
 私達お酒も飲まないし、こうやっておばあさんのお手伝いしてる方が楽しいもの。
ね、エリオット!」

 「うん!」

 二人の言葉に老婆は目を細める。



 「ありがとう、あなた達は本当に良い子だね…
久し振りのお客さんが来てくれただけでも嬉しいのに、それがあなた達みたいに良い子だなんて…
今日は良い日だこと…」

 「ねぇ、お婆ちゃん、どうして宿屋なんて始めたの?
だってここは…その……」

 口篭もったエリオットに、老婆はにっこりと微笑んだ。



 「そうね。
こんな小さな町で宿屋なんておかしいわよね。
でも、昔はここらはそれなりに賑わっていたのよ。
 昔は、ジャーマシーに行く人達はこの街道を使ってこの先の港に行ってたからね。
その頃は、こんなに寂れた町じゃなかった…」

 老婆はそう言って食器を洗う手を止め、昔を思い出すようにどこか遠くを見つめる。



 「じゃあ、他所に港が出来たから、このあたりの街道が使われなくなったんだね!」

 老婆は、その言葉にゆっくりと首を振った。



 「……そうじゃないんだよ。」

 「おばあさん、何か他に理由があったの?」

 老婆は、何も答えず残りの食器を手早く洗うと、タオルで手を拭い、二人に声をかけた。



 「ちょっと休もうか。」

 三人が各々台所の椅子に腰をかけた途端、ラスターから酒となにかつまむものが欲しいとの声がかかった。



 「あ、おばあちゃんとセリナは良いよ。
 僕が適当に何か持って行くから。」

 「でも……」

 「良いから、ここはエリオットに任せときましょ!」

 気を遣い、立ち上がろうとした老婆の手をセリナが引きとめる。



 「……本当に申し訳ないね。」

 「ううん、気にしないで。
それより、おばあさん、疲れたんじゃないの?
もう横になる?」

 老婆はセリナに向かって微笑みながら、首を振った。



 「そうじゃないのよ。
ちょっと、昔の話をしようかと思ってね。」

 「そうだったの!
わぁ、楽しみだわ!
ぜひ、聞かせて下さい!」

 「そんなたいした話じゃないのよ。」

はしゃぐセリナに少し照れたような表情を浮かべ、老婆はゆっくりと話し始めた。

 
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