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それぞれの旅立ち
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「う~ん、よく寝た…」
ラスターは長椅子の上で大きく伸びをした。
「本当、よく寝てたわね…」
「え…?あ、あれ…セリナ…」
ラスターは身体を起こし、不思議そうにあたりを見渡す。
「ここ…俺の部屋じゃないよな…?
なんで、俺……」
「……やっぱり覚えてないのね。
二人共、なかなか帰って来ないから私は眠ってしまったんだけど、朝早くに誰かさんの大きな歌声で起こされたわ。
それに、その人ったら、そのままここに入って来て、長椅子に倒れ込んだが最後、どんなに起こしても起きなくて……」
言い追えると、セリナは冷やかな視線をラスターに向ける。
「えっ!お…俺、そんなこと…
あ、いて……」
ラスターは、顔をしかめ頭を押さえた。
「……全く、もうっ!」
セリナは、立ち上がり、カバンの中から出した薬をラスターの前に差し出した。
「痛み止めの薬よ。」
「あ、ありがとう。」
セリナは、水差しの水をグラスに注ぎ、ラスターに手渡し、ラスターはそれで薬を嚥下した。
「ラスター、お酒のにおいが酷いわ。
夕食の前にお風呂に入った方が良いんじゃない?」
「ゆ、夕食?
もうそんな時間なのか?」
セリナは黙って懐中時計を差し出した。
時計の針は、夕方というにはまだ早いが、昼はとっくに過ぎた曖昧な時間を指していた。
「……二人共、朝までかかって調べて来てくれたんですものね。
どんなお話が聞けるのか、とても楽しみだわ。」
その言葉がが皮肉であることは、ラスターにもすぐにわかった。
「……ってことは、ダルシャも朝帰りなんだな?
あ、セリナ!
俺は、朝帰りって言ったって、酒場で飲んでただけだからな。
ダルシャみたいなところには行ってないからな!」
「……ダルシャみたいな所…?」
小首を傾げるセリナの耳元で、ラスターは小さな声で囁いた。
それを聞いたセリナの目が大きくなり、頬はほんのりと赤くなる。
「……本当にもう……」
セリナは俯き、諦めたように小さな溜息を吐いた。
「う~ん、よく寝た…」
ラスターは長椅子の上で大きく伸びをした。
「本当、よく寝てたわね…」
「え…?あ、あれ…セリナ…」
ラスターは身体を起こし、不思議そうにあたりを見渡す。
「ここ…俺の部屋じゃないよな…?
なんで、俺……」
「……やっぱり覚えてないのね。
二人共、なかなか帰って来ないから私は眠ってしまったんだけど、朝早くに誰かさんの大きな歌声で起こされたわ。
それに、その人ったら、そのままここに入って来て、長椅子に倒れ込んだが最後、どんなに起こしても起きなくて……」
言い追えると、セリナは冷やかな視線をラスターに向ける。
「えっ!お…俺、そんなこと…
あ、いて……」
ラスターは、顔をしかめ頭を押さえた。
「……全く、もうっ!」
セリナは、立ち上がり、カバンの中から出した薬をラスターの前に差し出した。
「痛み止めの薬よ。」
「あ、ありがとう。」
セリナは、水差しの水をグラスに注ぎ、ラスターに手渡し、ラスターはそれで薬を嚥下した。
「ラスター、お酒のにおいが酷いわ。
夕食の前にお風呂に入った方が良いんじゃない?」
「ゆ、夕食?
もうそんな時間なのか?」
セリナは黙って懐中時計を差し出した。
時計の針は、夕方というにはまだ早いが、昼はとっくに過ぎた曖昧な時間を指していた。
「……二人共、朝までかかって調べて来てくれたんですものね。
どんなお話が聞けるのか、とても楽しみだわ。」
その言葉がが皮肉であることは、ラスターにもすぐにわかった。
「……ってことは、ダルシャも朝帰りなんだな?
あ、セリナ!
俺は、朝帰りって言ったって、酒場で飲んでただけだからな。
ダルシャみたいなところには行ってないからな!」
「……ダルシャみたいな所…?」
小首を傾げるセリナの耳元で、ラスターは小さな声で囁いた。
それを聞いたセリナの目が大きくなり、頬はほんのりと赤くなる。
「……本当にもう……」
セリナは俯き、諦めたように小さな溜息を吐いた。
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