夢の硝子玉

それぞれの旅立ち

９３

「ダルシャ…俺、なんだか急に腹が減ってきた。
なにかうまいもん食わせてくれよ。」

ダルシャにはいつも険を含んだ物言いをするラスターが、珍しく穏やかな声で話した。



 「そうだな…
じゃあ、まずは腹ごしらえをするか…」

 「私、お店のことを聞いてくるわ。」

そう言うと、セリナは走りだし、三人は通りすがりの男から聞いた美味しいと評判のレストランに向かった。



 ＊



 「この気取った店の雰囲気はいまひとつ気に食わないが…料理は確かにうまかったな。」

そう言いながら、ラスターは満足げに頷く。



 「まぁ、珍しい！
ラスターが料理を誉めるなんて…ねぇ、ダルシャ、明日は雨が降るんじゃないかしらね！」

 「……そうかもしれんな。
 雨具を用意しといた方が良さそうだな。」

 「なんだよ、それ…」

ラスターは、そう言いながら小さく舌打ちしたが、その顔は僅かに微笑んでいた。



 「それで、セリナ…
願い石のことなんだが…」

ダルシャは少し声を潜めて話を切り出した。



 「すごく近いわ。
 馬車に乗ってる時からどんどん近付いてるのを感じたんだけど…
もしかしたら、この町のどこかにあるのかもしれない…」

 「この町に…！？」

 思わずラスターは声を上げ、あたりを見回した。
 幸い、それほど大きな声ではなかったため、ラスターに注意を払うものは誰もおらず、三人はほっと胸を撫で下ろした。



 「……なぁ、ダルシャ。
 今夜、酒場でそれとなく願い石の情報を探ってみないか？」

 「そうだな…では、そうしよう。
 宿まで送るから、セリナは先に休んでいてくれ。」

その後、セリナを宿に送り届けたダルシャとラスターは、再び夜の町へ繰り出した。