夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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「な、なんだよ、フレイザー!
 僕を騙したの!?」

 「すまん。
でも、こうでもしなきゃ、中に入れてくれないだろ?」

エリオットは、しばらくフレイザーを睨みつけていたが、やがて不機嫌な顔をして長椅子に腰掛けた。



 「エリオット…おまえの気持ちはわかる…
でも…わけがあったんだろ?
 一体、何があったのか教えてくれよ。」

 「わかる…?
 君になにがかるっていうの?
 僕は…僕は人を殺しちゃったんだよ…しかも、三人も…
君は人を殺したことがあるとでもいうの!?」

 話すうちにエリオットの感情は高ぶり、その瞳からは涙が流れていた。
フレイザーはそれを見て、はっとしたように目を大きく見開き、そしてがっくりとうな垂れた。



 「そうだな…俺にはそんな経験はない。
ごめん…軽軽しくおまえの気持ちがわかるなんて言って…
おまえは俺が体験した事のない程の辛い想いをしてるんだよな。
……なぁ、エリオット…
俺にはおまえの本当の痛みはわからないかもしれないけど…でも、少しでも助けになりたいと思ってる。
 俺達…元の世界では忘れられてて…この先も絶対に戻れるって保証はなくて…
時々、それがたまらなくなってすごく苦しくなることがある。
 俺がここでなんとか生きていられるのはおまえがいてくれてるおかげなんだよ。
この世界で俺が一番信頼出来るのはおまえなんだよ。
……だから、俺にもおまえの苦しみをわけてくれ。
 俺なんて頼りになれないかもしれないけど…頼むよ、エリオット。」

 「フレイザー…」

 瞳にいっぱいの涙を浮かべたフレイザーのその顔が、エリオットには自分と同じ17歳のフレイザーに見えた。



 「……ごめん。フレイザー、僕、酷い事言って……」

 「そんなことないさ。
 俺の方こそ悪かった。
そうだよな…そんなことがあったんじゃ元気出せって言う方が無理だよな…
ダルシャがせっかく気を遣ってくれたのに、俺は…
ごめんな、エリオット。」

 「フレイザー…僕……」

エリオットの言葉が途切れ、その代わりに涙が流れ出して止まらない。
フレイザーは、エリオットの隣に移動し、その涙が枯れるまで背中をさすることしか出来なかった。
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