夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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「それとな…」

シャルロッテは声をひそめてあたりを見渡すと、フレイザーを手招きし、耳元でそっと呟く。



 「おまえさんと旅をしとるあの子…ジャックとか言うたな。
あの子もどうもわけありのようじゃな。
くれぐれも気を付けるんじゃぞ。」

 「あいつも何かの術にかかってるんですか!?」

 「いや…そうではない。
そういうものとは違うのじゃが…あの子にはなにか得体の知れん暗い影のようなものがある。
 悪意というよりは…こう……深い悲しみや寂しさや苦しみのような……
出来れば、関わらん方が良さそうじゃが…」

 「……でも、俺……」

 困ったような表情を浮かべて言葉を失ったフレイザーに、シャルロッテは声をあげて笑い出す。



 「おまえさんがそういうことはわかってたさ。
……面倒見が良いのは悪いことではないが、じゃが、くれぐれも気を許すのではないぞ。
 気の緩みが大変なことになるかもしれんからな…」

そう言ったシャルロッテの瞳はとても真剣なものだった。



 「……わかりました。」

フレイザーは、シャルロッテのその言葉を胸に刻みながら、深く頷いた。



 *



 「シャルロッテ、元気でね~!
 僕、必ずまた来るからね~~!」

エリオットは大粒の涙をぽろぽろこぼしながら、千切れる程に手を振った。

あれから、二日後、エリオット達はシャルロッテの家を旅立った。
エリオットは、まだ完全に記憶を取り戻すことはなかったが、シャルロットの言った通り、フレイザーと出会ったことがきっかけとなって、断片的な記憶がちらほらとよみがえり始めていた。
 思い出した記憶の一つの葡萄畑という言葉から、シャルロッテはその町を推測した。
そこまでは例の魔物の山を迂回し、ずいぶんと後戻ることになるが、まずはそこへ行くのが良いだろうと話は決まった。

 
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