夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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「……なんだよ、この子になにかあるのかよ?」

エリオットの不安を、アンガスが言葉に代えた。



 「……この子には呪いのようなものがかかっておる。」

 「の、呪い!?」

 二人の不安は、答えを聞く前よりもなおさら大きなものとなった。



 「なんじゃ、なんじゃ、二人共情けない顔をして…」

 「だって、呪いだなんて…一体、この子にはどんな呪いがかかってるっていうんだ?」

 「それがはっきりとはわからんのじゃが…
とにかく、性質の悪いものではなさそうじゃからそう心配はいらんじゃろう。
しかし、このわしにもよくわからん魔法がまだこの世にあったとはのう…
ま、一緒に暮らしてるうちに何かわかるかもしれん。
 心配しなさんな。
……そういえば、おまえさんは名前も思いだせんかったんじゃな?」

 「は、はい…」

いまだ「呪い」の衝撃から立ち直れないエリオットは、小さな声で答える。



 「名前がないんじゃ都合が悪い。
 思い出すまで、何か仮の名前を付けておこうかね。
……そうだ!グレースなんてどうじゃ?」

 「グレース?
グレースかぁ……この子はグレースって柄じゃないようだが…」

そう言いながら、アンガスはエリオットをじろじろと眺め回す。



 「そんなことはない。
グレースは、わしの友達の魔法使いの名前なんじゃ。
 薬については天下一品の魔法使いじゃったぞ。」

 「魔法使いだったってことは…」

 「昨年死んだ。」

 「おいおい、死んだばかりの友達の名前だなんて縁起でもねぇ…
もっと他に何かないのかよ。」

 「気に入らんか?
じゃあ……そうじゃな、マーサはどうじゃ?」

 「そいつも死んだ友達の名前か?」

 「いや、ただの思い付きじゃ。」

 「マーサか…まぁ、グレースよりは良さそうだな。
おまえさんはどうだ?」

 「……うん、僕はそれで良いよ。」

 「よし、じゃあ、これからおまえさんはマーサじゃ。
さて、それじゃあ、マーサ…早速、夕飯の手伝いをしてもらおうかね?」

 「はい!」

シャルロッテに着いてマーサは台所へ向かい、そんなマーサの後ろ姿をアンガスはほっとしたような顔でみつめた。

 
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