166 / 802
それぞれの旅立ち
59
しおりを挟む
*
「本当に大丈夫なのか?
無理しなくて良いんだぜ。」
「うん、ありがとう。
でも、大丈夫です。」
エリオットが意識を取り戻してから二日後、二人は洞窟を出た。
二人の行き先は、魔法使いの老婆の家。
アンガスは、ある魔法使いに頼まれたきのこを取りに数ヶ月に一度魔物の山に入る。
ちょうどその時に魔物に取り囲まれどうにもならない状況になっていたエリオットをすんでの所で救い出し、隣の山の洞窟まで運んで来たということだった。
「届けものはそれほど急ぐもんじゃないから、気にしなくて良いんだぜ。」
「本当に、僕、もう大丈夫だから…」
「…そうか。
じゃあ、具合が悪くなったら言うんだぜ。
俺がまたおぶって行ってやるからな!」
「……ありがとう。」
ほんのりと頬を染めたエリオットは、無骨なこの男にいつの間にか父親のような安心感を感じていた。
自分が何者なのか、名前さえも思い出せない心細さはたとえようもない程大きく、塞ぎこむエリオットをアンガスは根気良く勇気付けてくれた。
時には苛立ち泣き叫ぶエリオットを、アンガスは懸命に励ました。
アンガスの飾らない言葉が、次第にエリオットの胸に染みこんでいく…
「大丈夫だ!記憶は必ず戻る!」
何度も何度も言われたアンガスのこの言葉が、ようやくエリオットの心を落ち着かせた。
「シャルロッテ婆さんは、今はまぁ…その、なんだが…昔はすごく優秀な魔法使いだったそうだ。
きっと嬢ちゃんの力になってくれるぜ!」
アンガスは、エリオットのことをきっと魔法使いだろうと言った。
魔物の山にある特別なきのこを取りに来た所を、魔物の群れに囲まれたのではないかと推測した。
エリオットはそう言われてもなにも思い出せなかったが、身に付けているものを見ると自分でもアンガスの推測した通りなのではないかと思えた。
今、記憶がないのはイラズルの吐いた息にやられたためで、その症状はじきに治るものだと言われていたが、エリオットは少しでも早く記憶を取り戻したかった。
胸に渦巻く不安を一刻も早く払拭したかった。
そのためにも、きっとその魔法使いは自分の力になってくれる…そう感じ、エリオットはシャルロッテの家に行く事を急いだのだ。
「本当に大丈夫なのか?
無理しなくて良いんだぜ。」
「うん、ありがとう。
でも、大丈夫です。」
エリオットが意識を取り戻してから二日後、二人は洞窟を出た。
二人の行き先は、魔法使いの老婆の家。
アンガスは、ある魔法使いに頼まれたきのこを取りに数ヶ月に一度魔物の山に入る。
ちょうどその時に魔物に取り囲まれどうにもならない状況になっていたエリオットをすんでの所で救い出し、隣の山の洞窟まで運んで来たということだった。
「届けものはそれほど急ぐもんじゃないから、気にしなくて良いんだぜ。」
「本当に、僕、もう大丈夫だから…」
「…そうか。
じゃあ、具合が悪くなったら言うんだぜ。
俺がまたおぶって行ってやるからな!」
「……ありがとう。」
ほんのりと頬を染めたエリオットは、無骨なこの男にいつの間にか父親のような安心感を感じていた。
自分が何者なのか、名前さえも思い出せない心細さはたとえようもない程大きく、塞ぎこむエリオットをアンガスは根気良く勇気付けてくれた。
時には苛立ち泣き叫ぶエリオットを、アンガスは懸命に励ました。
アンガスの飾らない言葉が、次第にエリオットの胸に染みこんでいく…
「大丈夫だ!記憶は必ず戻る!」
何度も何度も言われたアンガスのこの言葉が、ようやくエリオットの心を落ち着かせた。
「シャルロッテ婆さんは、今はまぁ…その、なんだが…昔はすごく優秀な魔法使いだったそうだ。
きっと嬢ちゃんの力になってくれるぜ!」
アンガスは、エリオットのことをきっと魔法使いだろうと言った。
魔物の山にある特別なきのこを取りに来た所を、魔物の群れに囲まれたのではないかと推測した。
エリオットはそう言われてもなにも思い出せなかったが、身に付けているものを見ると自分でもアンガスの推測した通りなのではないかと思えた。
今、記憶がないのはイラズルの吐いた息にやられたためで、その症状はじきに治るものだと言われていたが、エリオットは少しでも早く記憶を取り戻したかった。
胸に渦巻く不安を一刻も早く払拭したかった。
そのためにも、きっとその魔法使いは自分の力になってくれる…そう感じ、エリオットはシャルロッテの家に行く事を急いだのだ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜
和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。
与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。
だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。
地道に進む予定です。
野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
異世界サバイバルゲーム 〜転移先はエアガンが最強魔道具でした〜
九尾の猫
ファンタジー
サバイバルゲームとアウトドアが趣味の主人公が、異世界でサバゲを楽しみます!
って感じで始めたのですが、どうやら王道異世界ファンタジーになりそうです。
ある春の夜、季節外れの霧に包まれた和也は、自分の持ち家と一緒に異世界に転移した。
転移初日からゴブリンの群れが襲来する。
和也はどうやって生き残るのだろうか。
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!
異世界子ども食堂:通り魔に襲われた幼稚園児を助けようとして殺されたと思ったら異世界に居た。
克全
児童書・童話
両親を失い子ども食堂のお世話になっていた田中翔平は、通り魔に襲われていた幼稚園児を助けようとして殺された。気がついたら異世界の教会の地下室に居て、そのまま奴隷にされて競売にかけられた。幼稚園児たちを助けた事で、幼稚園の経営母体となっている稲荷神社の神様たちに気に入られて、隠しスキルと神運を手に入れていた田中翔平は、奴隷移送用馬車から逃げ出し、異世界に子ども食堂を作ろうと奮闘するのであった。
前世で眼が見えなかった俺が異世界転生したら・・・
y@siron
ファンタジー
俺の眼が・・・見える!
てってれてーてってれてーてててててー!
やっほー!みんなのこころのいやしアヴェルくんだよ〜♪
一応神やってます!( *¯ ꒳¯*)どやぁ
この小説の主人公は神崎 悠斗くん
前世では色々可哀想な人生を歩んでね…
まぁ色々あってボクの管理する世界で第二の人生を楽しんでもらうんだ〜♪
前世で会得した神崎流の技術、眼が見えない事により研ぎ澄まされた感覚、これらを駆使して異世界で力を開眼させる
久しぶりに眼が見える事で新たな世界を楽しみながら冒険者として歩んでいく
色んな困難を乗り越えて日々成長していく王道?異世界ファンタジー
友情、熱血、愛はあるかわかりません!
ボクはそこそこ活躍する予定〜ノシ
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
妾の子だった転生勇者~魔力ゼロだと冷遇され悪役貴族の兄弟から虐められたので前世の知識を活かして努力していたら、回復魔術がぶっ壊れ性能になった
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
◆2024/05/31 HOTランキングで2位 ファンタジーランキング4位になりました! 第四回ファンタジーカップで21位になりました。皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!!
『公爵の子供なのに魔力なし』
『正妻や兄弟姉妹からも虐められる出来損ない』
『公爵になれない無能』
公爵と平民の間に生まれた主人公は、魔力がゼロだからという理由で無能と呼ばれ冷遇される。
だが実は子供の中身は転生者それもこの世界を救った勇者であり、自分と母親の身を守るために、主人公は魔法と剣術を極めることに。
『魔力ゼロのハズなのになぜ魔法を!?』
『ただの剣で魔法を斬っただと!?』
『どうやってあの年齢であの強さを手に入れたんだ……?』
『あいつを無能と呼んだ奴の目は節穴か?』
やがて周囲を畏怖させるほどの貴公子として成長していく……元勇者の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる