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それぞれの旅立ち
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「それなら俺が行く!」
「君よりも私の方が腕は立つ。
君はここで待ってろ。」
「俺が行くって言ってるだろ!」
「君もわからない奴だなぁ…」
ランプを取り合う二人の手が滑り、ランプは乾いた音を立ててその場に砕け散った。
「あっ!」
「ちっ!なんてこった…あんたのせいだぞ!!」
「なんだと!君が……」
その時、手を叩く大きな音が響いた。
「もう!二人共いいかげんにしてちょうだい!
危ないから動きまわらないで!
困ったわね…どこかに蝋燭はないかしら?
あなた達も探してちょうだい。
あ、破片を踏まないように気を付けてね!」
二人は、いつになく厳しいセリナの声に言葉を失い、目を凝らし慎重にその場を離れると、セリナと一緒に蝋燭を探し始めた。
家の中は思ったよりも頻繁に訪れる者がいるのか、必要なものはほぼ揃っておりそれなりに片付いていた。
「あった!!」
しばらくして、ラスターが納戸の隅から二本の蝋燭と燭台を見つけ出した。
居間のテーブルの上に、ほのかな灯かりが灯り、三人の顔を照らし出す。
「蝋燭がみつかったのは良かったが、すっかり暗くなってしまったな。
まさか蝋燭を持って外に出るわけにも行くまいし……困ったな。」
「松明を使えば良いじゃないか!
俺が松明を持って歩くから、あんたが魔物を倒してくれよ。」
「そんな…危険だわ。
それに松明って言ったって、あんな棒切れではもたないでしょう?」
「それに油がない…
灯かりがなくても大丈夫だ。私一人で行って来る。
ラスター、セリナのことを頼んだぞ。」
止める二人を振りきり、外に飛び出そうとしたダルシャが扉の前で突然短い悲鳴を上げた。
「ダルシャ、どうしたの!?」
「どうやら、ランプの破片を踏んでしまったようだ。」
ダルシャは、顔をしかめ、片足を上げる。
蝋燭の灯かりで照らし出されたダルシャの靴の裏には、鋭い破片が突き刺さっていた。
「……ったく、こんな時に何やってんだよ…」
ラスターはぶつぶつと愚痴を呟きながらもダルシャに肩を貸し、再び居間に引き返す。
「君よりも私の方が腕は立つ。
君はここで待ってろ。」
「俺が行くって言ってるだろ!」
「君もわからない奴だなぁ…」
ランプを取り合う二人の手が滑り、ランプは乾いた音を立ててその場に砕け散った。
「あっ!」
「ちっ!なんてこった…あんたのせいだぞ!!」
「なんだと!君が……」
その時、手を叩く大きな音が響いた。
「もう!二人共いいかげんにしてちょうだい!
危ないから動きまわらないで!
困ったわね…どこかに蝋燭はないかしら?
あなた達も探してちょうだい。
あ、破片を踏まないように気を付けてね!」
二人は、いつになく厳しいセリナの声に言葉を失い、目を凝らし慎重にその場を離れると、セリナと一緒に蝋燭を探し始めた。
家の中は思ったよりも頻繁に訪れる者がいるのか、必要なものはほぼ揃っておりそれなりに片付いていた。
「あった!!」
しばらくして、ラスターが納戸の隅から二本の蝋燭と燭台を見つけ出した。
居間のテーブルの上に、ほのかな灯かりが灯り、三人の顔を照らし出す。
「蝋燭がみつかったのは良かったが、すっかり暗くなってしまったな。
まさか蝋燭を持って外に出るわけにも行くまいし……困ったな。」
「松明を使えば良いじゃないか!
俺が松明を持って歩くから、あんたが魔物を倒してくれよ。」
「そんな…危険だわ。
それに松明って言ったって、あんな棒切れではもたないでしょう?」
「それに油がない…
灯かりがなくても大丈夫だ。私一人で行って来る。
ラスター、セリナのことを頼んだぞ。」
止める二人を振りきり、外に飛び出そうとしたダルシャが扉の前で突然短い悲鳴を上げた。
「ダルシャ、どうしたの!?」
「どうやら、ランプの破片を踏んでしまったようだ。」
ダルシャは、顔をしかめ、片足を上げる。
蝋燭の灯かりで照らし出されたダルシャの靴の裏には、鋭い破片が突き刺さっていた。
「……ったく、こんな時に何やってんだよ…」
ラスターはぶつぶつと愚痴を呟きながらもダルシャに肩を貸し、再び居間に引き返す。
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