夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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 「ラスター、待ってよ~~!」

エリオットのその声に、しかめっ面のラスターが振り返った。



 「……なんだよ。」

 「なんだよはないだろ。
ボクも一緒に行くよ。」

 「俺は一人で大丈夫だ。」

 「そうはいかないよ。」

エリオットは、ラスターの腕にがっしりとしがみつく。



 「あぁ~…もう、わかったって…
わかったから、離れろ。」

ラスターは、エリオットの腕を振り放した。



 「ちぇっ!冷たいなぁ…
これがボクじゃなくてセリナだったら離れろなんて言わないんだろうなぁ…」

 「ば、馬鹿!
な、なんで、そんなこと…」

 「あれ~?ラスター、なんだか顔が妙に赤いよ!?」

エリオットは、悪戯っぽい笑みを浮かべラスターを冷やかす。



 「こ、これはさっきのワインで、ちょっと酔ってるだけだ。
くだらないこと言ってたら置いていくぞ!」

 「はいはい、わかりましたよ。」

 踵を返して歩き出したラスターの横を、にやけ顔のエリオットが着いて歩く。




 *




 「ちらほら出て来始めたね。」

 魔物が出没し出したのは、町を離れ三時間程歩いた頃だった。
なかなか姿を現さない魔物に、二人の気もすっかり緩んだ頃、奴らは突然現れた。
 今の所は、ラスターが大声を張り上げながら棒切れを振りまわす事で追い払えていたが、宿の者の話によれば、こんな程度ではないはずだ。
 二人は、それを肝に銘じ、気を引き締めて歩き出した。
 予想通り、進めば進むほど魔物の数は増え始めたが、幸いな事に強暴な物がいなかったことでそれほど危険な想いをすることはなかった。



 「なぁ、エリオット、無人の町まではまだ割りとかかるんだよな?」

 「そうだね。
 朝発ったら、日の暮れ近くに町に着くって言う話だったから、まだしばらくかかると思うよ。」

 「あ……」

ラスターは何かを思い出したように顔をしかめ、頭をかいた。



 「……どうしたの?」

 「町に行った所で、誰も住んでないから食べ物はないんだよな…
畜生!
じゃあ、何か?
 明日の夕方までこのままずっとはらぺこでいなきゃいけないってことなのか…」

 「そういえば、少しお腹すいたね。」

 「あの時は俺も頭に来てたから飛びだしちまったけど、こんなことなら食べ物だけでも準備してからにすりゃ良かったな。
……今朝は、酒ばっかり飲んでたし…あぁ、畜生!
これもすべてはあのいけすかない貴族様のせいだ!」

ラスターは、力任せに足元の小石を蹴飛ばす。
エリオットは、そんなラスターに苦笑いを浮かべ、ぽんと背中を叩いた。
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