夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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「……なんだよ。
あんな呪いをかけられても、まだ女がほしいのか。
 貴族ってのはなんでこうスケベばかりなんだろうな!」

 皮肉な口調で呟くラスターに、ダルシャは小さく失笑する。



 「……君のようなお子ちゃまにはまだわからんのだよ。」

 「な、なんだとぉ~~!」

ラスターの腕を引きとめるセリナの事にも気付いていないのか、ダルシャはからからと呑気に笑う。
その態度にますます怒りを募らせたラスターを、今度はエリオットも一緒になってなだめすかしたが、機嫌を損ねたラスターはそのまま店を飛び出した。



 「待ってよ、ラスター。」

 「俺はあんなのと一緒に行けない。
 先に行くから、途中の町で落ち合おうぜ。」

ラスターはそう言い残し、振り返る事もせずそのままさっさと歩き出した。



 「ラスター!待って!
エリオット、お願い。
ラスターに着いていってあげて!」

 「え?でも…」

 「私なら大丈夫よ。
ダルシャがいるから、私はしばらくしたら追いかけるわ。
だから、エリオット、早く!」

 「うん、わかった!」

エリオットは、セリナに言われるまま、すぐにラスターの後を追う。



 店に戻ると、ダルシャはまだワインを飲んでいた。
 顔色は先程よりもさらに赤みを増していた。



 「……ダルシャ、もういいかげんにしとかないと…」

 「何を言ってるんだ。
こんなに素晴らしいワインには、めったに出会えるものではないぞ。
 出来るだけたくさん買って帰らねば…」

 「ダルシャ…まだ旅は続くのよ。
 買っていくのは少しにしてね。
それと、ラスターとエリオットは先に出発したから、私達はもうしばらくしてから発ちましょう。」

 「なぜだ?」

 「だって…この先は魔物がたくさん出るのよ。
そんなに酔ってたんじゃ…」

 「酔ってる…?
セリナ、この私が、これっぱかしのワインで酔うとでも思ってるのか?
 見くびってもらっちゃ困るなぁ…」

そう言いながら、立ちあがったダルシャの足元がふらつく。



 「なんだ、なんだ、この床は…
どうしてこんなにふにゃふにゃしてるんだ?」

ダルシャはたまらなくおかしそうに、明るい声をあげて笑った。
 心配するセリナを尻目にダルシャは店にあったりんごを一つ手に取ると、そのまま店を出た。



 「セリナ、よく見てろよ。」

ダルシャはセリナに向かってにっこりと微笑むと、りんごを空高く放り投げた。
そして、腰の剣を素早く引き抜き、りんごは中央から真っ二つに切り分けられ地面に転がった。
ダルシャは満足げに頷き、セリナは彼に無理な作り笑いを返した。 

 
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