夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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「思い出した!
そうそう、そんなことがあった。
 綺麗な身なりをした女の子がうちで食事をした後で、なにやら御者と揉めていた。
 御者がえらく怒って…そうだ、あの時、その娘は髪につけてた綺麗な髪飾りを御者にやってたような気がするよ。
 御者は、怒りながらそのまま出て行って、その子も一緒に出ていってしまったから、うちの食事代はもらえなかったんだ。」

 「そうだわ…そういえば、髪飾りを上げたような気がします。」

 「おまえの髪飾りなら、売れば馬車賃の何倍もするはずだぞ。
 子供だと思って足元を見られたのだな。
そんなことよりも、ご主人…妹が無作法をしてしまい申し訳なかった。
その代金を…」

 「いいよ、いいよ、いまさら、そんなもん。
それより、良かったら何か食べていっておくれ。」

 店の主人は、アンドリューが払おうとした金をどうしても受け取らなかったため、彼は却って気を遣い出来るだけ高い料理とワインを注文した。

アーザイドの町へは道なりにいけば、歩いてもそう遠くはないと言う。

 「ご主人、その町へ向かう途中で分かれ道のようなものはありませんか?」

 「あぁ、あるよ。」

 「それじゃ!」

ダグラスの上げた声に店主は目を大きくする。
リュシーとダグラスは、同時に頷いた。
リュシーは、アーザイドへ行く途中でその分かれ道に進んでしまったため、おかしな場所へ出たのは間違いない。
その道は、広大な林へと続く道だということだった。
そこから、スラムへの道程はずいぶんかかるだろうと判断されたため、三人は次の朝、出発することになった。



 *



 「ここじゃな…リュシーさんはきっとここで道を間違えたんじゃ。」

ダグラスは分かれ道で立ち止まり、わずかに微笑んだ。



 「では、行こう。」

 三人は、アーザイド方面ではない方の道を進んで行った。
 一応、道らしきものがあるにはあるのだが、そこにはただ延々と林が続くだけ。



 「そう!確かこんな感じでした!
 暗くなってもどこにも灯かり一つ見えず、あの時はどれほど心細かったことか。」

リュシーは、高い木々を見上げ、当時を思い出したのか不安げな声で呟いた。

 
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