夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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サーカスのある町へは二時間程かかると言われた事から、御者に話を聞いた所、ナリムから約二時間かかりサーカス等が催されるのは、アーザイドの町だろうと推測された。
その中継地点には四つ程の町があるとのこと。
 一つめの町はすぐ傍だということから除外し、二つめの町から順番に立ち寄ることになった。
 二つめの町は小さな町で、ここではないとリュシーは断言した。
 三つめの町もどこか違うと言う。
そうなると、残るは四つめの町しかない。



 「リュシー、本当にさっきの町ではないんだな?
しかし、年月の経過と共に町の景観は移り行くもの…そのこともあわせて考えるのだぞ。」

 「はい。わかっています。」

 「町には何か特徴的なものはなかったのか?」

 「特徴的なものですか……教会と、宿屋と……」

 「そんなものはどこの町にもある。」

アンドリューは苛立ち、眉間には深い皺が刻まれた。



 「まぁまぁ、アンドリューさん、リュシーさんを責めても仕方のない事ですよ。
もうずいぶんと昔のことなんですからな。
リュシーさん、慌てんでええから、町であったことをゆっくりと思い出してみなされ。」

 「はい……あの時…御者さんが車輪の具合を見てらっしゃる間…私は…
そう!どこかのお店で待つように言われました。
 昼食の前に飛び出て来たからおなかが減っていて、それで昼食を食べて…しばらくして御者さんが来られて出ようとした時に私がお金を持っていないというと急に大きな声で怒鳴られて…」

 「リュシー、おまえは一銭の金も持っていなかったのか?」

 「ええ…だって私は普段お金を自分で払ったことはなかったんですもの…」

アンドリューは、口を開けたままリュシーの顔をみつめ、リュシーは困ったように肩をすくめる。



 「なんという娘だ……」

アンドリューな信じられないといった風に、何度も頭を振る。



 「まぁまぁ、アンドリューさん。
とにかく、食堂をあたってみましょう。」

 町から入って少し歩いた通りに、小さなレストランがあった。
リュシーはなんとなく外観が違うようだと言ったが、とりあえず、三人はその店に入ることにした。



 「二十年近く前の話かぁ…っていうと、おやじが店をやってて俺がまだ見習いだった頃のことだな。」

 「では、その当時からこのお店はあったのですね。」

 「あぁ、あったよ。
 数年前に店を建て替えたんだが、歴史はけっこう長いんだ。
……そうだ!」

 話の途中で、主人がいきなり手を打った。

 
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