夢の硝子玉

それぞれの旅立ち

２５

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 次の日からジャックは少しずつフレイザーに打ち解けて行った。
 部屋からはあまり出ようとはせず、相変わらずフードもはずさなかったが、あれほどいやがっていた酔い止めの薬もすんなり飲むようになり、そのおかげもあってか数日経つと体調もずいぶん良くなっていた。



 「おまえ、最近ちょっとこのあたりがふっくらして来たんじゃないか？」

 朝食を採りながら、フレイザーが頬を指差しジャックの顔をみつめた。



 「それは、フレイザーが毎日たくさん食わせるからだろ！」

ジャックは顔を赤らめながら乱暴に言い放つ。



 「はいはい、そうだよ。
おまえが太ったのは俺のせいだな。すまんすまん。
でも、まだ足りないぞ。
もっと食べて、もっと身体を鍛えないとな。」

 「でも…明日、船は大陸に着くんだ。
そしたら…」

フレイザーは、黙ってジャックの前に小さな皮袋を差し出した。



 「なんだよ、これ…」

 「持っていけよ。
って、個室を取ったからそんなには残ってないけど、贅沢しなけりゃしばらくは食べられる。」

 「だ…だって…あんただって金がいるだろ？」

 「それなら心配するな。
スエルシアで、ダルシャと落ちあうことになってるんだ。
 落ち合う場所もそう遠くないからなんとかなる。」

それは、ジャックのことを思いやるフレイザーの吐いた嘘だった。
 個室を取ったことで手持ちの金はずいぶん減り、しかも残った金の大半をジャックに差し出したため、ダルシャ達と落ち合うゾラーシュの町までは馬車にも乗れず宿にも泊まれない状況だったのだ。




 「でも……」

ジャックは、皮袋をみつめながらどうしたものかと戸惑っているようだった。