129 / 802
それぞれの旅立ち
22
しおりを挟む
「……言いたくないのか…
じゃあ、名前を教えてくれよ。名前くらいなら良いだろ?
あ、俺はフレイザーっていうんだ。」
「お…俺は……ジャックだ。」
「ジャックか…それでいくつなんだ?」
「じゅ…18だ…」
「18?
……おまえ、幼く見えるなぁ…まだ15、6かと思ってたよ。
もっとしっかり食べないと成長しないぞ。」
少年は気を悪くしたのか、さらに俯き黙りこんだ。
「ま…まぁ、人によって成長に早い遅いはあるからな。
そんなに気にすることはないさ。」
フレイザーは、少年を気遣い不自然な笑みを浮かべた。
「あんたは……」
「なんだ?」
「あんたは、金持ちなのか?」
「俺が金持ちに見えるか?」
少年は首を振った。
「だろ?
俺は、金持ちなんかじゃない。
一緒に旅をしてる貴族に世話になりっぱなしなんだ。
実は、今もな…」
フレイザーは、これまでもいきさつを簡単に話した。
ただ、願い石を探していることについては触れずにおいた。
「良い金づるがいるから、こんな風に俺みたいな見ず知らずの者に優しく手を差し伸べるってわけか…」
「ダルシャは金づるなんかじゃない。
旅の仲間で友人だ。」
「友人か…」
少年はフレイザーの言葉を鼻で笑う。
「……おまえ…よほど、辛いことがあったんだな…」
その言葉に、思わず少年は顔を上げ、フレイザーの瞳をじっとみつめた。
「ずいぶんとわかったようなことを言うんだな。
俺を憐れんでるのか?」
「……そうだな。
何があったかは知らないが、そんな風に心を閉ざしてしまうなんて悲しいことだ。
世の中、おまえが思うほど悪い奴ばかりじゃないさ。
そうやって心を閉ざしてしまえば傷付くことはないかもしれない。
だけどな、それは弱い奴のすることだ。
男なら、何度傷付いても人を信じてみろよ。
何度も傷付いたら、その分、強くなれるんだ。」
「もうやめろ!
お説教ならたくさんだ!
俺のことなんか、何も知らないくせに…!」
少年は、その場から立ちあがり荷物を掴むと、乱暴に扉を開けて外へ出た。
じゃあ、名前を教えてくれよ。名前くらいなら良いだろ?
あ、俺はフレイザーっていうんだ。」
「お…俺は……ジャックだ。」
「ジャックか…それでいくつなんだ?」
「じゅ…18だ…」
「18?
……おまえ、幼く見えるなぁ…まだ15、6かと思ってたよ。
もっとしっかり食べないと成長しないぞ。」
少年は気を悪くしたのか、さらに俯き黙りこんだ。
「ま…まぁ、人によって成長に早い遅いはあるからな。
そんなに気にすることはないさ。」
フレイザーは、少年を気遣い不自然な笑みを浮かべた。
「あんたは……」
「なんだ?」
「あんたは、金持ちなのか?」
「俺が金持ちに見えるか?」
少年は首を振った。
「だろ?
俺は、金持ちなんかじゃない。
一緒に旅をしてる貴族に世話になりっぱなしなんだ。
実は、今もな…」
フレイザーは、これまでもいきさつを簡単に話した。
ただ、願い石を探していることについては触れずにおいた。
「良い金づるがいるから、こんな風に俺みたいな見ず知らずの者に優しく手を差し伸べるってわけか…」
「ダルシャは金づるなんかじゃない。
旅の仲間で友人だ。」
「友人か…」
少年はフレイザーの言葉を鼻で笑う。
「……おまえ…よほど、辛いことがあったんだな…」
その言葉に、思わず少年は顔を上げ、フレイザーの瞳をじっとみつめた。
「ずいぶんとわかったようなことを言うんだな。
俺を憐れんでるのか?」
「……そうだな。
何があったかは知らないが、そんな風に心を閉ざしてしまうなんて悲しいことだ。
世の中、おまえが思うほど悪い奴ばかりじゃないさ。
そうやって心を閉ざしてしまえば傷付くことはないかもしれない。
だけどな、それは弱い奴のすることだ。
男なら、何度傷付いても人を信じてみろよ。
何度も傷付いたら、その分、強くなれるんだ。」
「もうやめろ!
お説教ならたくさんだ!
俺のことなんか、何も知らないくせに…!」
少年は、その場から立ちあがり荷物を掴むと、乱暴に扉を開けて外へ出た。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
神とモフモフ(ドラゴン)と異世界転移
龍央
ファンタジー
高校生紺野陸はある日の登校中、車に轢かれそうな女の子を助ける。
え?助けた女の子が神様?
しかもその神様に俺が助けられたの?
助かったのはいいけど、異世界に行く事になったって?
これが話に聞く異世界転移ってやつなの?
異世界生活……なんとか、なるのかなあ……?
なんとか異世界で生活してたら、今度は犬を助けたと思ったらドラゴン?
契約したらチート能力?
異世界で俺は何かをしたいとは思っていたけど、色々と盛り過ぎじゃないかな?
ちょっと待って、このドラゴン凄いモフモフじゃない?
平凡で何となく生きていたモフモフ好きな学生が異世界転移でドラゴンや神様とあれやこれやしていくお話し。
基本シリアス少な目、モフモフ成分有りで書いていこうと思います。
女性キャラが多いため、様々なご指摘があったので念のため、タグに【ハーレム?】を追加致しました。
9/18よりエルフの出るお話になりましたのでタグにエルフを追加致しました。
1話2800文字~3500文字以内で投稿させていただきます。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載させて頂いております。
異世界転生者の図書館暮らし1 モフモフと悪魔を添えて
パナマ
ファンタジー
「命大事に」がモットーの、異世界召喚を夢みる厨二病の少年が、異世界転生し、倒壊した世界樹跡に建てられた図書館で、悪魔を従えてモフモフの精霊獣と暮らし、難敵を攻略する冒険譚。明るめ、ギャグ寄り。
かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる
竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。
ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする.
モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする.
その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.
悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~
こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。
それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。
かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。
果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!?
※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる