夢の硝子玉

ルカ(聖夜月ルカ)

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それぞれの旅立ち

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「それが、なんと!この近くの森で殺人があったんだ!」

 「しかも…普通の殺人じゃないんだ。
 良いか、聞いて驚くなよ。
なんと、いっぺんに五人も殺されたんだぜ!」

 「五人…!!」

サムと巫女、そしてその他の三人を殺した犯人が同一人物だと思われていることにダルシャは驚いたのだが、自警団の男達は違う解釈をしていた。



 「全く酷ぇことしやがる…
女と若い男は刺し殺され、三人は黒焦げになっていた。」

 「だが、おかしなことに持ち物はそのままだったんだ。
だから、物盗りの犯行じゃあねぇな。」

 「では、怨恨か何か…ということか?」

ダルシャは何食わぬ顔で、見当はずれの質問を投げ掛けた。



 「多分、そうだろうな…」

 「それで…殺された五人の身元はわかったのか?」

 「残念ながら身元を証明するようなものは何もなかったんだ。
ただ……」

 「どうしたんだ?」

 「女のポケットに船酔いの薬があった。
おそらくよその大陸からやって来たんじゃないか?」

 「そ…そんな…!!」

ダルシャの慌てぶりに、三人は驚き、彼をみつめたまま黙りこむ。



 「あ…失礼した。
 私もつい最近、フーリシアから船で渡って来たばかりでな。
もしかして、一緒に船に乗ってた人じゃないかと気になって…」

 「そうだったのか、じゃあ、良かったら顔を見て確認してくれないか?」

 「あぁ、わかった。
そんなことなら協力させてもらうよ。」




 *



ダルシャは三人の若者達と共に、教会に向かった。
そこには、昨日、森の中で会った五人の柩が並べてあった。



 「三人は酷い状態だから見ない方が良い。
こっちの女と男は大丈夫だから、この二人を見てくれ。」

ダルシャが見せられたのは、巫女とサムの遺体だった。
 男の方は、間違いなく「サム」と呼ばれていたあの男だった。
ダルシャは、女性の顔をじっくりと観察する。
 昨日とは違い、穏やかな表情を浮かべたその顔はとても整ったものだった。
 年の頃は四十過ぎだろうか…リュシーよりは少し年上ではないかとダルシャは思った。



 (セリナの母親としても適当な年齢だ…)

ダルシャの表情が暗く曇る。



 「どうだ?知ってる顔か?」

ダルシャは首を振った。



 「幸いなことに知り合いではなかった。
しかし、気の毒に…」

ダルシャは柩の前で両手を組み、巫女に祈りの言葉を捧げた。
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