100 / 802
魔物の森
9
しおりを挟む
カインの家の中は、人間の家とさほど変わらないものだった。
一行は、通された部屋の長椅子に恐る恐る腰を降ろす。
「ちょっと窮屈だが、我慢してくれよな。
あ、何か飲むか?
……って、その前に傷の手当てをしなくちゃな。」
カインは早口でそう言うと、少し決まり悪そうにダルシャをみつめた。
「これなら大丈夫だ。
たいしたことはない。」
「……すまなかったな。
でも…仕方なかったんだ…」
「あぁ、わかっている。
勝手に入って来た私達が悪いんだ。」
カインはこの森のことを話し始めた。
元々、この森には獣人達が住んでいた。
ある時、森の中に人間が迷いこんだ。
詳しいいきさつはわからないが、その人間と獣人達はわかりあい仲良くなった。
その頃、この森の周りには少しずつ人間達が住みつくようになっていた。
このままでは獣人達がみつかるのも時間の問題かもしれない。
人間は、この森に住みつき、そのさらに奥には魔物がいるという噂を流し、念の入ったことには魔法使いに頼んで木を黒く変色させた。
「なんと!そういうことじゃったのか!」
「爺さんが聞いてた話とはずいぶん違うみたいだな。」
「わしの曾爺さんは子孫に嘘を吐いてまで、獣人達を匿おうとしたのか…」
「えっ?じゃあ、あんたは俺達を助けてくれた人間の子孫なのか?」
「あぁ、ダグラスじゃ、ヨロシクな!」
二人は固い握手を交わした。
最初はカインのことを恐れていた一行も、彼の話を聞いてるうちにすっかり打ち解けていた。
ダグラスのそれをきっかけに、それぞれが自己紹介を始め、やがていつの間にか皆で夕食の準備に取りかかっていた。
「こんなに楽しい気分で料理をするのは初めてだ!」
笑顔で鍋をのぞくカインの横で、ラスターやダグラスは野菜を切ざみ、エリオットはテーブルに食器を並べた。
「ダルシャ、大丈夫か?」
「あぁ、こんなものすぐに治るさ。」
口ではそう言ってはいたが、それがけっこうな深手であることは傷の手当てを見ていたフレイザーにはよくわかっていた。
「こんな時、回復の魔法を使える者がいたら良いのに…」
「君がこうやって手当てをしてくれるんだから、そんな者必要ないさ。
ありがとう、セリナ。」
セリナはその言葉に嬉しそうにはにかむ。
一行は、通された部屋の長椅子に恐る恐る腰を降ろす。
「ちょっと窮屈だが、我慢してくれよな。
あ、何か飲むか?
……って、その前に傷の手当てをしなくちゃな。」
カインは早口でそう言うと、少し決まり悪そうにダルシャをみつめた。
「これなら大丈夫だ。
たいしたことはない。」
「……すまなかったな。
でも…仕方なかったんだ…」
「あぁ、わかっている。
勝手に入って来た私達が悪いんだ。」
カインはこの森のことを話し始めた。
元々、この森には獣人達が住んでいた。
ある時、森の中に人間が迷いこんだ。
詳しいいきさつはわからないが、その人間と獣人達はわかりあい仲良くなった。
その頃、この森の周りには少しずつ人間達が住みつくようになっていた。
このままでは獣人達がみつかるのも時間の問題かもしれない。
人間は、この森に住みつき、そのさらに奥には魔物がいるという噂を流し、念の入ったことには魔法使いに頼んで木を黒く変色させた。
「なんと!そういうことじゃったのか!」
「爺さんが聞いてた話とはずいぶん違うみたいだな。」
「わしの曾爺さんは子孫に嘘を吐いてまで、獣人達を匿おうとしたのか…」
「えっ?じゃあ、あんたは俺達を助けてくれた人間の子孫なのか?」
「あぁ、ダグラスじゃ、ヨロシクな!」
二人は固い握手を交わした。
最初はカインのことを恐れていた一行も、彼の話を聞いてるうちにすっかり打ち解けていた。
ダグラスのそれをきっかけに、それぞれが自己紹介を始め、やがていつの間にか皆で夕食の準備に取りかかっていた。
「こんなに楽しい気分で料理をするのは初めてだ!」
笑顔で鍋をのぞくカインの横で、ラスターやダグラスは野菜を切ざみ、エリオットはテーブルに食器を並べた。
「ダルシャ、大丈夫か?」
「あぁ、こんなものすぐに治るさ。」
口ではそう言ってはいたが、それがけっこうな深手であることは傷の手当てを見ていたフレイザーにはよくわかっていた。
「こんな時、回復の魔法を使える者がいたら良いのに…」
「君がこうやって手当てをしてくれるんだから、そんな者必要ないさ。
ありがとう、セリナ。」
セリナはその言葉に嬉しそうにはにかむ。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
裏切りの代償
志波 連
恋愛
伯爵令嬢であるキャンディは婚約者ニックの浮気を知り、婚約解消を願い出るが1年間の再教育を施すというニックの父親の言葉に願いを取り下げ、家出を決行した。
家庭教師という職を得て充実した日々を送るキャンディの前に父親が現れた。
連れ帰られ無理やりニックと結婚させられたキャンディだったが、子供もできてこれも人生だと思い直し、ニックの妻として人生を全うしようとする。
しかしある日ニックが浮気をしていることをしり、我慢の限界を迎えたキャンディは、友人の手を借りながら人生を切り開いていくのだった。
他サイトでも掲載しています。
R15を保険で追加しました。
表紙は写真AC様よりダウンロードしました。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~
みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。
生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。
夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。
なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。
きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。
お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。
やっと、私は『私』をやり直せる。
死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。
最強魔術師、ルカの誤算~追放された元パーティーで全く合わなかった剣士職、別人と組んだら最強コンビな件~
蒼乃ロゼ
ファンタジー
魔法学校を主席で卒業したルカ。高名な魔術師である師の勧めもあり、のんびり冒険者をしながら魔法の研究を行おうとしていた。
自身の容姿も相まって、人付き合いは苦手。
魔術師ながらソロで旅するが、依頼の都合で組んだパーティーのリーダーが最悪だった。
段取りも悪く、的確な指示も出せないうえに傲慢。
難癖をつけられ追放されたはいいが、リーダーが剣士職であったため、二度と剣士とは組むまいと思うルカ。
そんな願いも空しく、偶然謎のチャラい赤髪の剣士と組むことになった。
一人でもやれるってところを見せれば、勝手に離れていくだろう。
そう思っていたが────。
「あれー、俺たち最強コンビじゃね?」
「うるさい黙れ」
「またまたぁ、照れなくて良いから、ルカちゃん♪」
「(こんなふざけた奴と、有り得ない程息が合うなんて、絶対認めない!!!!)」
違った境遇で孤独を感じていた二人の偶然の出会い。
魔法においては最強なのに、何故か自分と思っている通りに事が進まないルカの様々な(嬉しい)誤算を経て友情を育む。
そんなお話。
====
※BLではないですが、メンズ多めの異世界友情冒険譚です。
※表紙はでん様に素敵なルカ&ヴァルハイトを描いて頂きました。
※小説家になろうでも公開中
異世界転移したら女神の化身にされてしまったので、世界を回って伝説を残します
高崎三吉
ファンタジー
その乙女の名はアルタシャ。
『癒し女神の化身』と称えられる彼女は絶世の美貌の持ち主であると共に、その称号にふさわしい人間を超越した絶大な癒しの力と、大いなる慈愛の心を有していた。
いかなる時も彼女は困っている者を見逃すことはなく、自らの危険も顧みずその偉大な力を振るって躊躇なく人助けを行い、訪れた地に伝説を残していく。
彼女はある時は強大なアンデッドを退けて王国の危機を救い
ある国では反逆者から皇帝を助け
他のところでは人々から追われる罪なき者を守り
別の土地では滅亡に瀕する少数民族に安住の地を与えた
相手の出自や地位には一切こだわらず、報酬も望まず、ただひたすら困っている人々を助けて回る彼女は、大陸中にその名を轟かせ、上は王や皇帝どころか神々までが敬意を払い、下は貧しき庶民の崇敬の的となる偉大な女英雄となっていく。
だが人々は知らなかった。
その偉大な女英雄は元はと言えば、別の世界からやってきた男子高校生だったのだ。
そして元の世界のゲームで回復・支援魔法使いばかりをやってきた事から、なぜか魔法が使えた少年は、その身を女に変えられてしまい、その結果として世界を逃亡して回っているお人好しに過ぎないのだった。
これは魔法や神々の満ち溢れた世界の中で、超絶魔力を有する美少女となって駆け巡り、ある時には命がけで人々を助け、またある時は神や皇帝からプロポーズされて逃げ回る元少年の物語である。
なお主人公は男にモテモテですが応じる気は全くありません。
メルレールの英雄-クオン編-前編
朱璃 翼
ファンタジー
月神を失って3000年ーー魂は巡り蘇る。
失われた月神の魂は再び戻り、世界の危機に覚醒するだろう。
バルスデ王国の最年少騎士団長クオン・メイ・シリウスはある日、不思議な夢を見るようになる。次第に夢は苦しめる存在となりーーーー。
※ノベルアップ+、小説家になろう、カクヨム同時掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる