80 / 802
隣の大陸へ
7
しおりを挟む
「あと少しだね。」
「早く着いて欲しいわ。」
「その通りだな…」
船の甲板で、ダルシャ、セリナ、エリオットの三人は夕陽をみつめていた。
船に乗りこんでから、剣の稽古はまだ一日もなされてなかった。
それというのも、フレイザーとラスターは酷い船酔いにかかり、動く事はおろか食欲さえもなくしていたからだった。
エリオットやセリナも全く酔わなかったわけではないが、二日目には完全に慣れた。
その様子を見て、きっとフレイザーとラスターもすぐに回復するだろうと思われたが、残念ながらそうはいかず、二人はすでにこの六日間を船室で苦しんでいた。
「ねぇ、ダルシャ。
あの二人、大丈夫かな…?」
「船酔いで死んだ奴はいない。
明日、陸地に着けば、きっとすぐに回復するさ…」
「陸地に着くまで…」
気の毒な二人のことを考え、エリオットは小さな溜息を吐いた。
「あ、あの子…」
セリナが小さな声で呟いた。
そこにいたのは、この季節には少し暑過ぎるようなコートを着込んだ少年とその両親と思われる男女だった。
少年は疲れたような表情でうっすらと瞼を開け、父親に背負われている。
「あの子、昨日もこの時間に来てたよね。
あの子も船酔いなのかな?」
「いや…おそらくあの子は病気なのだろう…
それも、かなり良くない病だ…気の毒に…」
「えっ!」
エリオットとセリナは、何も言わずただ親子の後姿をみつめていた。
*
次の日の昼過ぎ、船はようやくフーリシア大陸に着いた。
青い顔をしたラスターとフレイザーは、ダルシャ達に支えられながら、おぼつかない足取りで船を降りる。
「うぅ…まだ身体が揺れてる…」
「気持ち悪い…」
船を降りたからといってすぐに船酔いが治るわけもなく、一行は二人の歩調に合わせ、ごくゆっくりと歩いて行った。
「ダルシャ、どこへ向かうつもりなの?」
「とりあえず、この近くの町に行こう。
そこで願い石の話が聞ければ良いのだが…
セリナ、このあたりで石を感じるか?」
「いいえ。
感じるのはダルシャの持ってる双子石の感覚だけだから、このあたりにはないと思うわ。」
「だろうな…こんな所にあるなら船の上からでも感じるはずだものな。」
フレイザーとラスターは、そんな三人の会話も聞いてはいないようで、不機嫌な顔をしながらただ黙々と歩き続けていた。
「早く着いて欲しいわ。」
「その通りだな…」
船の甲板で、ダルシャ、セリナ、エリオットの三人は夕陽をみつめていた。
船に乗りこんでから、剣の稽古はまだ一日もなされてなかった。
それというのも、フレイザーとラスターは酷い船酔いにかかり、動く事はおろか食欲さえもなくしていたからだった。
エリオットやセリナも全く酔わなかったわけではないが、二日目には完全に慣れた。
その様子を見て、きっとフレイザーとラスターもすぐに回復するだろうと思われたが、残念ながらそうはいかず、二人はすでにこの六日間を船室で苦しんでいた。
「ねぇ、ダルシャ。
あの二人、大丈夫かな…?」
「船酔いで死んだ奴はいない。
明日、陸地に着けば、きっとすぐに回復するさ…」
「陸地に着くまで…」
気の毒な二人のことを考え、エリオットは小さな溜息を吐いた。
「あ、あの子…」
セリナが小さな声で呟いた。
そこにいたのは、この季節には少し暑過ぎるようなコートを着込んだ少年とその両親と思われる男女だった。
少年は疲れたような表情でうっすらと瞼を開け、父親に背負われている。
「あの子、昨日もこの時間に来てたよね。
あの子も船酔いなのかな?」
「いや…おそらくあの子は病気なのだろう…
それも、かなり良くない病だ…気の毒に…」
「えっ!」
エリオットとセリナは、何も言わずただ親子の後姿をみつめていた。
*
次の日の昼過ぎ、船はようやくフーリシア大陸に着いた。
青い顔をしたラスターとフレイザーは、ダルシャ達に支えられながら、おぼつかない足取りで船を降りる。
「うぅ…まだ身体が揺れてる…」
「気持ち悪い…」
船を降りたからといってすぐに船酔いが治るわけもなく、一行は二人の歩調に合わせ、ごくゆっくりと歩いて行った。
「ダルシャ、どこへ向かうつもりなの?」
「とりあえず、この近くの町に行こう。
そこで願い石の話が聞ければ良いのだが…
セリナ、このあたりで石を感じるか?」
「いいえ。
感じるのはダルシャの持ってる双子石の感覚だけだから、このあたりにはないと思うわ。」
「だろうな…こんな所にあるなら船の上からでも感じるはずだものな。」
フレイザーとラスターは、そんな三人の会話も聞いてはいないようで、不機嫌な顔をしながらただ黙々と歩き続けていた。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
前世の祖母に強い憧れを持ったまま生まれ変わったら、家族と婚約者に嫌われましたが、思いがけない面々から物凄く好かれているようです
珠宮さくら
ファンタジー
前世の祖母にように花に囲まれた生活を送りたかったが、その時は母にお金にもならないことはするなと言われながら成長したことで、母の言う通りにお金になる仕事に就くために大学で勉強していたが、彼女の側には常に花があった。
老後は、祖母のように暮らせたらと思っていたが、そんな日常が一変する。別の世界に子爵家の長女フィオレンティーナ・アルタヴィッラとして生まれ変わっても、前世の祖母のようになりたいという強い憧れがあったせいか、前世のことを忘れることなく転生した。前世をよく覚えている分、新しい人生を悔いなく過ごそうとする思いが、フィオレンティーナには強かった。
そのせいで、貴族らしくないことばかりをして、家族や婚約者に物凄く嫌われてしまうが、思わぬ方面には物凄く好かれていたようだ。
倒したモンスターをカード化!~二重取りスキルで報酬倍増! デミゴッドが行く異世界旅~
乃神レンガ
ファンタジー
謎の白い空間で、神から異世界に送られることになった主人公。
二重取りの神授スキルを与えられ、その効果により追加でカード召喚術の神授スキルを手に入れる。
更にキャラクターメイキングのポイントも、二重取りによって他の人よりも倍手に入れることができた。
それにより主人公は、本来ポイント不足で選択できないデミゴッドの種族を選び、ジンという名前で異世界へと降り立つ。
異世界でジンは倒したモンスターをカード化して、最強の軍団を作ることを目標に、世界を放浪し始めた。
しかし次第に世界のルールを知り、争いへと巻き込まれていく。
国境門が数カ月に一度ランダムに他国と繋がる世界で、ジンは様々な選択を迫られるのであった。
果たしてジンの行きつく先は魔王か神か、それとも別の何かであろうか。
現在毎日更新中。
※この作品は『カクヨム』『ノベルアップ+』にも投稿されています。
非典型異能力CEOの名演技作戦【名演技編】~暗黒一族の令嬢は悪役じゃなかったので復讐に困ります~
千笑(チサキ)
ファンタジー
【名演技編】完結。 【復讐劇編】準備中。
【冷酷毒舌の偽悪役令嬢×復讐のために花畑脳を演じるCEO】(全二部50万字予定)
*** *** ***
少女リカはとある暗黒異能家族の長女、冷酷毒舌で融通が利かない。異能力がないと判断されて、友人たちに裏切られて、家から追放される寸前になった。
イズルは神農財団の御曹司。その家族は暗黒家族の秘密を知ったせいで全員殺された。イズル一人だけが異能力のおかげで魔の手から逃れた。
暗黒家族のライバル組織は、復讐に手助けしようとイズルに声をかけた。
その組織が提案したのは、なんと、イズルがリカの夫になって、暗黒家族内部に侵入するという屈辱な「悪役令嬢」の「婿入り」計画だ。
リカの信頼を得るために、イズルは小馬鹿なCEOに扮して、リカと馬の合わない同居生活を始める。
そんなでたらめな計画で、果たして復讐できるのか?
---
素質ナシの転生者、死にかけたら最弱最強の職業となり魔法使いと旅にでる。~趣味で伝説を追っていたら伝説になってしまいました~
シロ鼬
ファンタジー
才能、素質、これさえあれば金も名誉も手に入る現代。そんな中、足掻く一人の……おっさんがいた。
羽佐間 幸信(はざま ゆきのぶ)38歳――完全完璧(パーフェクト)な凡人。自分の中では得意とする持ち前の要領の良さで頑張るが上には常に上がいる。いくら努力しようとも決してそれらに勝つことはできなかった。
華のない彼は華に憧れ、いつしか伝説とつくもの全てを追うようになり……彼はある日、一つの都市伝説を耳にする。
『深夜、山で一人やまびこをするとどこかに連れていかれる』
山頂に登った彼は一心不乱に叫んだ…………そして酸欠になり足を滑らせ滑落、瀕死の状態となった彼に死が迫る。
――こっちに……を、助けて――
「何か……聞こえる…………伝説は……あったんだ…………俺……いくよ……!」
こうして彼は記憶を持ったまま転生、声の主もわからぬまま何事もなく10歳に成長したある日――
異世界王女に転生したけど、貧乏生活から脱出できるのか
片上尚
ファンタジー
海の事故で命を落とした山田陽子は、女神ロミア様に頼まれて魔法がある世界のとある国、ファルメディアの第三王女アリスティアに転生!
悠々自適の贅沢王女生活やイケメン王子との結婚、もしくは現代知識で無双チートを夢見て目覚めてみると、待っていたのは3食草粥生活でした…
アリスティアは現代知識を使って自国を豊かにできるのか?
痩せっぽっちの王女様奮闘記。
異世界二度目のおっさん、どう考えても高校生勇者より強い
八神 凪
ファンタジー
旧題:久しぶりに異世界召喚に巻き込まれたおっさんの俺は、どう考えても一緒に召喚された勇者候補よりも強い
【第二回ファンタジーカップ大賞 編集部賞受賞! 書籍化します!】
高柳 陸はどこにでもいるサラリーマン。
満員電車に揺られて上司にどやされ、取引先には愛想笑い。
彼女も居ないごく普通の男である。
そんな彼が定時で帰宅しているある日、どこかの飲み屋で一杯飲むかと考えていた。
繁華街へ繰り出す陸。
まだ時間が早いので学生が賑わっているなと懐かしさに目を細めている時、それは起きた。
陸の前を歩いていた男女の高校生の足元に紫色の魔法陣が出現した。
まずい、と思ったが少し足が入っていた陸は魔法陣に吸い込まれるように引きずられていく。
魔法陣の中心で困惑する男女の高校生と陸。そして眼鏡をかけた女子高生が中心へ近づいた瞬間、目の前が真っ白に包まれる。
次に目が覚めた時、男女の高校生と眼鏡の女子高生、そして陸の目の前には中世のお姫様のような恰好をした女性が両手を組んで声を上げる。
「異世界の勇者様、どうかこの国を助けてください」と。
困惑する高校生に自分はこの国の姫でここが剣と魔法の世界であること、魔王と呼ばれる存在が世界を闇に包もうとしていて隣国がそれに乗じて我が国に攻めてこようとしていると説明をする。
元の世界に戻る方法は魔王を倒すしかないといい、高校生二人は渋々了承。
なにがなんだか分からない眼鏡の女子高生と陸を見た姫はにこやかに口を開く。
『あなた達はなんですか? 自分が召喚したのは二人だけなのに』
そう言い放つと城から追い出そうとする姫。
そこで男女の高校生は残った女生徒は幼馴染だと言い、自分と一緒に行こうと提案。
残された陸は慣れた感じで城を出て行くことに決めた。
「さて、久しぶりの異世界だが……前と違う世界みたいだな」
陸はしがないただのサラリーマン。
しかしその実態は過去に異世界へ旅立ったことのある経歴を持つ男だった。
今度も魔王がいるのかとため息を吐きながら、陸は以前手に入れた力を駆使し異世界へと足を踏み出す――
さようなら、家族の皆さま~不要だと捨てられた妻は、精霊王の愛し子でした~
みなと
ファンタジー
目が覚めた私は、ぼんやりする頭で考えた。
生まれた息子は乳母と義母、父親である夫には懐いている。私のことは、無関心。むしろ馬鹿にする対象でしかない。
夫は、私の実家の資産にしか興味は無い。
なら、私は何に興味を持てばいいのかしら。
きっと、私が生きているのが邪魔な人がいるんでしょうね。
お生憎様、死んでやるつもりなんてないの。
やっと、私は『私』をやり直せる。
死の淵から舞い戻った私は、遅ればせながら『自分』をやり直して楽しく生きていきましょう。
Bloody Rose〜血染め女王の罪と罰〜
鳩谷つむぎ
ファンタジー
「お願い出して! ここから出して! 女王様、お願いします! お許し下さい!」
地下室に響く少女の悲痛な叫び声。
少女が閉じ込められているのは、立っているのが精一杯な程の狭い空間。少女は中から懸命に命乞いをするが、女王は耳を貸すことなく…。
とある年、王家に誕生した美しい娘。
彼女の名はエルナ・バイゼル
シルクのように艶やかできめ細かい肌、見る者全てを虜にしてしまうような大きな瞳を持ち、まるで赤い薔薇のように類稀な美しさを持つエルナ。
時が経ち、エルナは初恋の人と結婚することになるが、夫からの愛を得られず、歳を重ねるごとに衰えていく自身の美貌に嘆く日々を送っていた。「美しさこそ全て」である彼女にとって、美貌を失うことは何よりも恐ろしいことであった。
ある日、エルナは城にある地下図書室で、「時を戻す魔術書」を見つける。それは、少女達の血を使って若返るという恐ろしいもので…。
自身の美貌に取り憑かれた女王が辿る運命とは…?
中世ヨーロッパを舞台にした恐ろしくも悲しいダークファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる