夢の硝子玉

旅立ち

１９

＊



 「本当にもうじき願い石がみつかるんだね！」

 「あぁ、きっとみつかるぜ。」

 夜も更けた頃、フレイザーとエリオットはこっそりと宿を抜け出すと、近くの空き地に腰を降ろした。
 空には大きさの違う二つの月がぽっかりと離れて浮かび、暗い闇を照らしている。
 初めて見た時には度肝を抜かれたこの光景も、今では二人の気に留まることさえない。



 「最初の願い石はセリナが使うんだよね？」

 「そうだな。
いくらなんでもこんなに皆に世話になっておいて、さっさと元の世界に戻ったり出来ないもんな。
それに、セリナのお母さんは悪い奴らに捕まってるんだ。
 出来るだけ早くしないとな。」

 「そうだよね。
 僕らは切羽詰まってるわけじゃないけど、セリナのお母さんは命の危険にさらされてるかもしれないんだもんね。」

 「その通りだ。
 一刻も早く見つけて救い出してやりたいよな！」

 「……だよね。
それにしても……」

エリオットは、くすくすと笑う。



 「何なんだよ、エリオット。
なんで笑うんだ？」

 「……なんかさ、フレイザーって最近本当に大人になったなぁ…って思ってね。
 最初は変な感じだったけど、最近はフレイザーが大人だってことに違和感がなくなって来たよ。
きっと見慣れただけじゃなくて、フレイザーの内面もここへ来て変わって来たんだよ。」

 「それを言うなら、エリオットの方がすごいじゃないか。
 最初はセリナと一緒の部屋もいやだって言ってたのに、最近は平気になったんだろ？」

 「確かにそうだね…
僕、女の子と一緒の部屋なんてどうしたら良いんだろうって最初はすごく心配したんだけど、セリナは僕のことをすっかり女の子だって思ってるもんね。
 向こうが僕のことを意識しないせいか、僕もだんだん慣れて来ちゃって…
 ……まったくおかしなもんだね。」

 「姿が変わると、中身もだんだんと外見と同じようになっていくのかもしれないな。」

 二人は、各々苦い笑いを浮かべる。



 「とにかく、俺達が元の世界に戻れる可能性は大きくなったってことだ。
これからも頑張って行こうぜ！」

 「うん！」

 二人は、顔を見合わせ固い握手を交わした。