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テーブルの上に手紙があるのを二人はみつけた。
「親愛なるクロエとカミーユへ」
それはルネとビセンテからの手紙だった。
『あなた方には、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
身体を返すのがこんなにも遅くなってごめんなさい。
私達はこれからはアランとアリス兄妹として生きていきます。
二人にはとても申し訳ないのだけど、私達が人間として生きていくにはこの方法しかなかったのです。
彼らにめぐりあえたのは、本当に幸運でした。
別荘に遊びに来ていた彼らと知り合い、約束を交しました。
あなた方がこの手紙を読んでいる頃、私達はアランとアリスとして遠い街に旅立っていることでしょう。
もう二度とあなた方とお会いすることはないと思いますが、あなた方のことは忘れません。
本当にどうもありがとう。
この家はせめてものおわびの品です。
これから先、食べていくのにも困らないようにしてあります。
ビセンテは私とは違って、人間としてもけっこう優秀な人だったようです。
あなた方の幸せを遠くから祈っています。
ルネ、ビセンテ』
「…可哀想に…あの子達は、あんな小さなうちからお人形として生きていくのね…」
ルネは、流れる涙をそっと拭った。
「…そして、おそらく、年を取ったらまた新しい身体を…」
「…やめて!
…そんな恐ろしいこと…」
「でも…真実だよ…
子供なら簡単に騙せるから、それで新しい身体に子供を使うことを思いついたんだろう…」
「そんな…ひどいわっ…!
そういえば、兄妹だって書いてあったけど…それじゃあ…」
ルネは、頭に浮かんだいやな想いに口をつぐんだ。
「彼らにはきっとそんなことは関係ないことなんだろう…」
「でも、世間がそんなことは許さないわよ…」
「それなら、きっと二人でどこか遠くへでも行くんじゃないかな?」
「…そうね…彼らには兄妹だっていうことなんて、たいした問題じゃないのよね…」
カミーユは小さく頷いた。
「本当に気の毒だが…僕らにはもうどうすることも出来ない…
こんなこと話したって、誰も信じさえしないだろうからね。
クロエ…僕らは、これから残りの人生を精一杯生きていこう…悔いのないように精一杯……」
「そうね…私達にはそうするしかないのかもしれないわね…
もうそれほど長くはないかもしれないけど…
でも、私…やっぱり幸せだわ…最期まであなたと一緒にいられるんですもの…」
「僕もだよ、クロエ…
これから先、君と一緒に暮らしていけるのなら、それがたとえどんなに短い時間だとしてもかまわないさ」
「カミーユ…」
「親愛なるクロエとカミーユへ」
それはルネとビセンテからの手紙だった。
『あなた方には、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。
身体を返すのがこんなにも遅くなってごめんなさい。
私達はこれからはアランとアリス兄妹として生きていきます。
二人にはとても申し訳ないのだけど、私達が人間として生きていくにはこの方法しかなかったのです。
彼らにめぐりあえたのは、本当に幸運でした。
別荘に遊びに来ていた彼らと知り合い、約束を交しました。
あなた方がこの手紙を読んでいる頃、私達はアランとアリスとして遠い街に旅立っていることでしょう。
もう二度とあなた方とお会いすることはないと思いますが、あなた方のことは忘れません。
本当にどうもありがとう。
この家はせめてものおわびの品です。
これから先、食べていくのにも困らないようにしてあります。
ビセンテは私とは違って、人間としてもけっこう優秀な人だったようです。
あなた方の幸せを遠くから祈っています。
ルネ、ビセンテ』
「…可哀想に…あの子達は、あんな小さなうちからお人形として生きていくのね…」
ルネは、流れる涙をそっと拭った。
「…そして、おそらく、年を取ったらまた新しい身体を…」
「…やめて!
…そんな恐ろしいこと…」
「でも…真実だよ…
子供なら簡単に騙せるから、それで新しい身体に子供を使うことを思いついたんだろう…」
「そんな…ひどいわっ…!
そういえば、兄妹だって書いてあったけど…それじゃあ…」
ルネは、頭に浮かんだいやな想いに口をつぐんだ。
「彼らにはきっとそんなことは関係ないことなんだろう…」
「でも、世間がそんなことは許さないわよ…」
「それなら、きっと二人でどこか遠くへでも行くんじゃないかな?」
「…そうね…彼らには兄妹だっていうことなんて、たいした問題じゃないのよね…」
カミーユは小さく頷いた。
「本当に気の毒だが…僕らにはもうどうすることも出来ない…
こんなこと話したって、誰も信じさえしないだろうからね。
クロエ…僕らは、これから残りの人生を精一杯生きていこう…悔いのないように精一杯……」
「そうね…私達にはそうするしかないのかもしれないわね…
もうそれほど長くはないかもしれないけど…
でも、私…やっぱり幸せだわ…最期まであなたと一緒にいられるんですもの…」
「僕もだよ、クロエ…
これから先、君と一緒に暮らしていけるのなら、それがたとえどんなに短い時間だとしてもかまわないさ」
「カミーユ…」
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