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la poupee pure ver.
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それからのカミーユはまるで魂の抜け殻のようだった。
食事すら摂らず痩せ衰えていくカミーユを心配し、友人達が入れ替わり彼の家を訪ねて世話を焼いた。
そんな人達のおかげで、彼も少しづつ元気を取り戻していくことが出来た。
友人達はもうクロエのことは忘れるようにと言う。
カミーユ自身もそう思ってはいるのだが、それでもやはりクロエのことが忘れられないでいた。
カミーユは時折、クロエの働く店の近くまででかけては彼女の姿を探していた。
一度だけ、店の前で客を出迎えるクロエを見かけることが出来た。
その時のクロエは、真っ赤なドレスを身にまとい、まるで大輪の薔薇のように見えた。
するどい棘をたくさん付けた大輪の薔薇…
それはもはやカミーユには手の届かないもののように思えた。
ある時、カミーユがクロエの家の近くを通りがかった時、クロエの家の方がなにやら騒がしいことに気が付いた。
家のドアは開け放されていた。
それをいいことにカミーユが中に入ると、そこには二人の女性がいた。
「あ、あんたは確か…」
「マダム…おひさしぶりです。」
部屋の中にいたのは、この家の持ち主の女性とその娘だった。
カミーユはこの婦人と以前、何度か顔をあわせたことがあったのだ。
「どうしたのです?
何かあったのですか?」
「それを知りたいのは私の方だよ。
先日クロエがやってきて、引っ越すことにした、荷物はいらないから全部処分してほしいって…
いえね、今までの家賃と手間賃はちゃんと払ってくれたんだけどね。
しかし、なんだい?
長いこと見ないと思ったら、クロエはまるで別人じゃないか。
あの格好は、酒場ででも働いているんじゃないのかい?」
「……僕にはわかりません…」
本当のことを口にするのがいやで、カミーユは言葉を濁した。
「あんたとも会ってないのかい?
…そうかい…一体どうしちまったんだろうね…
…それにしたってこの荷物…
けっこうあるね。」
「家具以外は捨てるしかないわね、母さん」
「そうだね。
じゃ、片付けていこうか…」
「あ…あの…」
「なんだい?」
「あの…彼女の残したぬいぐるみ達をいただいて良いでしょうか?」
「ぬいぐるみ?
どうせ捨てるもんだしそりゃあかまわないけど…
そんなもの、どうするんだい?」
「……あ、ありがとうございます。」
カミーユはテーブルの上のクロスを取り、リビングに並ぶぬいぐるみ達をクロスに包んだ。
「ルネ…ひさしぶりだね…
良い子にしてたかい…?」
食事すら摂らず痩せ衰えていくカミーユを心配し、友人達が入れ替わり彼の家を訪ねて世話を焼いた。
そんな人達のおかげで、彼も少しづつ元気を取り戻していくことが出来た。
友人達はもうクロエのことは忘れるようにと言う。
カミーユ自身もそう思ってはいるのだが、それでもやはりクロエのことが忘れられないでいた。
カミーユは時折、クロエの働く店の近くまででかけては彼女の姿を探していた。
一度だけ、店の前で客を出迎えるクロエを見かけることが出来た。
その時のクロエは、真っ赤なドレスを身にまとい、まるで大輪の薔薇のように見えた。
するどい棘をたくさん付けた大輪の薔薇…
それはもはやカミーユには手の届かないもののように思えた。
ある時、カミーユがクロエの家の近くを通りがかった時、クロエの家の方がなにやら騒がしいことに気が付いた。
家のドアは開け放されていた。
それをいいことにカミーユが中に入ると、そこには二人の女性がいた。
「あ、あんたは確か…」
「マダム…おひさしぶりです。」
部屋の中にいたのは、この家の持ち主の女性とその娘だった。
カミーユはこの婦人と以前、何度か顔をあわせたことがあったのだ。
「どうしたのです?
何かあったのですか?」
「それを知りたいのは私の方だよ。
先日クロエがやってきて、引っ越すことにした、荷物はいらないから全部処分してほしいって…
いえね、今までの家賃と手間賃はちゃんと払ってくれたんだけどね。
しかし、なんだい?
長いこと見ないと思ったら、クロエはまるで別人じゃないか。
あの格好は、酒場ででも働いているんじゃないのかい?」
「……僕にはわかりません…」
本当のことを口にするのがいやで、カミーユは言葉を濁した。
「あんたとも会ってないのかい?
…そうかい…一体どうしちまったんだろうね…
…それにしたってこの荷物…
けっこうあるね。」
「家具以外は捨てるしかないわね、母さん」
「そうだね。
じゃ、片付けていこうか…」
「あ…あの…」
「なんだい?」
「あの…彼女の残したぬいぐるみ達をいただいて良いでしょうか?」
「ぬいぐるみ?
どうせ捨てるもんだしそりゃあかまわないけど…
そんなもの、どうするんだい?」
「……あ、ありがとうございます。」
カミーユはテーブルの上のクロスを取り、リビングに並ぶぬいぐるみ達をクロスに包んだ。
「ルネ…ひさしぶりだね…
良い子にしてたかい…?」
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