上 下
107 / 121
流星雨

しおりを挟む
「……すごい!」



空に星が降っている。
まさに、雨みたいに…
生まれて初めて見た不思議な光景に胸がいっぱいになる。



「綺麗……」



私は、空を見上げ、しばし天体ショーに見蕩れた。
いつまで見ていても見飽きない。
言葉では言い表せない美しさだ。



なぜだか、自然に涙がこぼれた。
これはどういう涙なんだろう?
悲しくはないはずなのに、どうして涙が…?



私は涙を拭い、また空の流星を見上げた。



昔から、流れ星に願い事をすると願いが叶うという言い伝えがある。
流れ星なんて滅多に見ないから、今まで願い事をしたことなんてない。
きっと、たまたま出くわしても、焦っているうちに星は流れてしまう。



だけど、今日みたいに流れていたら、願い事も言い放題だ。
それに、こんなにたくさん流れてたら、願い事を叶える力だってきっととても強いはず…



(そうよ…きっと叶うよね…)



ここは本当に穴場だった。
こんなに良く見えるのに、私の他には誰もいない。
近くに墓場があるせいかな?



(良かった…この空、独り占めだね。)



私はその場に体を倒した。
こうしたら、空がとても見やすい。
流星雨を見ながら、私は心の中で願い事を呟いた。
何度も、何度も…
あぁ、まただ。
涙が溢れてくる。
何も悲しいことなんてないのに…
初めての流星雨に感動してるのかな?
流星雨がぼやけて良く見えないよ…



***



次の日…
一人の女性の遺体がみつかった。
彼女の手の中には、彼女と男性の写真が握られていた。
二人は顔を寄せ、明るい笑顔を浮かべていた。
それが、昨年、事故死した彼氏だったとわかったのは、数日経った頃のことだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ラッキーアイテムお題短編集6

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
星座のラッキーアイテムをお題に書いた短編集です。

ラッキーアイテムお題短編集7

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
オール1ページの超短編集です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

1ページ劇場②

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
コミュニティ「1ページ同好会」のお題で書いた(ほぼ)1ページのお話達… ジャンルはさまざまです。

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...