上 下
99 / 121
洋風居酒屋

しおりを挟む
「お待たせしました。赤ワインです。」



今日も、店はほぼ満席だ。
昔からの夢だった洋風居酒屋を開店して、早くも一年近い時が流れた。
これといったトラブルもなく、いつの間にか、常連さんも増えた。







「あぁ、疲れた。」

「あ、赤ワイン、これからはいつもより少し多めに仕入れた方が良いかも。」

「そうね。最近は良く出るわね。」

店は、妻と妻の妹の三人できりもりしている。
最初は夫婦二人で始めたが、お客が増えてからはとても二人では回せず、そんな時、たまたま休職中の妻の妹に来てもらうようになったんだ。



「義兄さん、ラクレット、大当たりだったでしょ。
今日もずいぶん出たわよ。」

「あぁ、真奈美ちゃんの言った通りだったな。」

メニューは三人で決めている。
真奈美ちゃんは、若い子の流行りを良く知ってるから助かる。



「ボジョレーはどのくらい入れようか?」

「去年は全然足りなかったものね。」

「なにか新メニューもほしいよな。」

仕事が終わるとぐったりなのに、ついそんな話に花が咲いてしまう。



「そういえば、一周年ももうすぐだけど、何かやった方が良いかしら?」

「そうだよな。何が良いかな。
1ドリンクプレゼントとか?」

「えーー…」
「えーーっ。」



妻と義妹が同じタイミングで声を上げた。



「だめか?」

「しょぼい!」
「ダサい!」



「じゃあ、何が良いんだよ。」

「何かちょっとした小皿ものはどうかしら?」

「そうね。オシャレなおつまみの盛り合わせみたいな…」

「うんうん、良いね。
そんなの出てきたら嬉しいよねぇ。」

妻と義妹は、顔を寄せあって盛り上がっている。



酒や食べることが好きなだけで、店を始めてもうまくいくはずがない。
そんな風に言われたこともあったけど、思い切って始めて良かったと今では思う。
みんなが楽しく飲んで食べて寛いで、笑顔になって…



(まだまだ頑張らなきゃな!)



疲れてるはずなのに、なんだか無性にやる気がわいてくる。
みんなに喜んでもらえるように、もっと頑張ろう!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

行き場を失った恋の終わらせ方

当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」  自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。  避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。    しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……  恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。 ※他のサイトにも重複投稿しています。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

愛されていないのですね、ではさようなら。

杉本凪咲
恋愛
夫から告げられた冷徹な言葉。 「お前へ愛は存在しない。さっさと消えろ」 私はその言葉を受け入れると夫の元を去り……

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

処理中です...