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血塗れ

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「もう少しで出来るから待っててね。」

 温かな湯気…
部屋の中にはクリーミーな野菜のまったりとした香りが広がっていた。



 「寒い時はシチューが一番だよな。
 美奈の作るシチューは最高だよ。
どこのレストランより一番うまい!」

 「またまたぁ…」

 「本当だって。
 美奈の料理はそこらへんのコックよりずっとうまいよ。」

 「それはきっと、私の愛情がこもってるからよ。」

 「ふふ…そうかもしれないな。」

きつく抱きしめられて、熱いくちづけを受けた。



 彼は言った。
 結婚するのはやっぱり料理のうまい女が一番だって。



 愛しているのはおまえだけだって…



「本当にもう少しだから…待っててね。」


シチューは私の得意料理だ。
だけど、今日のシチューは出来が悪い。



 「ごめんね…変な色になっちゃって…」


ホワイトシチューが、おかしな色になってしまった。
でも、きっと味は良いはずだ。
だって、私は料理が得意だから…



「おまたせ。」

 私は赤く染まったシチューをテーブルに並べた。
テーブルの前には、シチューよりも真っ赤な彼が横たわっていた。



 「さぁ、早く食べて…」



 身動き一つしない彼…
私は、シチューに口を付けた。



 「だめ…今日のはおいしくないわ。」



 赤く染まったシチューは鉄の味がしておいしくない。
 私は赤い彼に目を遣った。


 知らず知らずに涙があふれて零れ落ち、
 涙は赤いしずくを垂らす…



「……あなたがいけないのよ。
 別れようなんて言うから……」

 私は料理が大好きだから、道具の手入れもこまめにしてた。
 包丁だっていつも研いで、切れ味を良くしてたから、私の包丁は彼の身体も見事に切り裂いて…



いつの間にか彼も私も血塗れになっていた。
いちごよりもとまとよりももっと赤く…



「だめだわ…また作り直さなきゃ…」



 私は、シチューを流しに流した。



 今度はうまく作らなきゃ…


だけど、こんなに血塗れではまた料理がおかしくなってしまいそう…


私の瞳から赤く染まった涙が零れ落ちた。


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