上 下
24 / 121

しおりを挟む
「百年後も今と変わらず若いままでいられるなんて……
エレナ…君は、世界一幸せな女だね……」



あなたのジョークにはしょっちゅう笑わせられたけど、今度ばかりは笑えない。



「じゃあね、エレナ。
……あ、そうだ…風邪には気を付けてね!」

そう言うと、ステファンは肩を震わせながら、私にくるりと背を向け歩き始めた。



わかってたはずなのに……
ステファンはいつも誰に対しても明るくて楽しくて、感情的になるようなことは全くない。
だけど、その笑顔の裏にぞっとするような冷酷さを隠していることに、私は気が付いていたはずなのに……







「いや!いやよ!
絶対にいや!
私、あなたとはどんなことがあっても別れないから!」

「……わかったよ。君には負けた。
そんなに言うのなら、僕も考え直すよ。
……そうだ、エレナ……
僕らが最初に出会ったあの山に登らないか?
あそこで、朝日を一緒に見よう!
そうすれば、僕も君に出会った頃の気持ちを思い出せるような気がするんだ。」

私は、彼のその言葉を信じて、夏でも雪の解けることのないあの山へ登った。



「まぁ…!なんて綺麗な…
ステファン!見……」

振り向いた途端、私の首に細いロープがかけられた。
何が起こっているのか、理解さえ出来ないうちに私はすごい力で首を締められ……



息が切れるその時になってようやく私は理解した。
彼は考え直す気なんて、最初からなかったんだってこと。



彼には精一杯尽くしてきたつもりだったけど…
私は最後に彼が一番嫌う事をしてしまったんだ……



「僕は常に自由でいたいんだ。」



それがステファンの口癖だった。
なのに、私は彼のその意志を邪魔してしまった。
だから、こんなことに……



降り積もった雪の原野に、彼は鼻歌を歌いながら穴を掘った。
固くなった雪を掘るのは大変らしく、こんなに寒いのに彼は汗だくになって……そして、彼は私をその中に横たえた。



私の身体はもう寒さを感じることはないけれど、こんな所でひとりぼっちで氷漬けにされてしまうのかと思ったら、やっぱり悲しい……



言わなきゃ良かった、あんなこと…
彼の邪魔をしなければ良かった……



さようなら、私の愛しき人……
冷たく暗い穴の中で、私の流した後悔の涙さえ凍りついた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ラッキーアイテムお題短編集7

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
オール1ページの超短編集です。

ラッキーアイテムお題短編集5

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
ラッキーアイテムのお題で書いた短編集です。

1ページ劇場②

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
コミュニティ「1ページ同好会」のお題で書いた(ほぼ)1ページのお話達… ジャンルはさまざまです。

ラッキーアイテムお題短編集6

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
星座のラッキーアイテムをお題に書いた短編集です。

1ページ劇場①

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
お題に沿って、(ほぼ)1ページで書いたお話たち。

お礼(無謀)企画

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
リクエストによるSS集です。 主にファンタジーになるはずです。 リクエスト、激しく募集中! ※表紙イラストはBy.ハチムラリン様です。m(__)m

Gift

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
リクエストやら記念に書いたSS集です。 すべて、数ページ程の短編ですが、続き物になっているお話もあります。 私や他のクリエイター様のオリキャラを使ったものや、私のお話の番外編もあります。

1ページ劇場③

ルカ(聖夜月ルカ)
ファンタジー
コミュニティ「1ページ同好会」のお題で書いたお話です。 第3弾!

処理中です...