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070 : 荒れ狂う波
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「取り乱してすまなかったな。」
ドミニクは真っ赤になった鼻を啜りながら、ぽつりと呟いた。
「気にすんなよ。でも、それだけ泣いたらすっきりしただろ。」
「確かにそうだな。
ずっとずっと、気に病んでたんだ。
妻やカトリーヌ、そして生まれた子に申し訳ないって…」
「あんたのしたことは良くないことだが、もううんと昔のことだ。
きっと、奥さん達も許してくれてるさ。
だからこそ、カトリーヌはあんたを探したんじゃないか?」
「いや、俺のしたことは一生許されるもんじゃない。
俺は、何の償いも出来てないんだからな。」
今の彼には何を言っても無駄だろう。
無責任な者は困るが、こんなに自分を責める者も厄介だ。
確かに、ドミニクは悪い事をした。
しかし、二十年も経てば、大概のことは許されるのではないだろうか。
特に、彼のように十分に反省しているのならなおのこと。
だが、彼はそうは思っていないようだ。
「ちょっと顔を洗ってくる。」
「あぁ、わかった。」
ドミニクの後ろ姿をみつめながら、リュックは大きな溜め息を吐いた。
「どうした?」
「いや、なんというか…生きるのが下手な男だなと思ってな。」
リュックの言わんとすることは、なんとなく察しがついた。
「悪いのはアイツだけど、あの嘆き悲しむ様子を見てたら、なんだか気の毒になって来ちまった。」
「なぜ、すぐに許しを請わなかったんだろうな。」
「だから、そこが生きるのが下手な所以じゃないか。」
「……なるほどな。」
ドミニクは決して悪い男ではない。
若い頃には、誰しも過ちを犯すものだ。
私だって、いくつもの間違いを犯してきた。
それをなかったことには出来ないが、すべて引き摺っていたら、前を向いて生きてはいけない。
まさに、リュックの言う通り、生きるのが下手な男だ。
「困ったもんだな。」
「とりあえず少しでも元気付けてやろうじゃないか。」
しばらくすると、どこか照れくさそうな顔をしたドミニクが戻って来た。
「取り乱してすまなかったな。」
ドミニクは真っ赤になった鼻を啜りながら、ぽつりと呟いた。
「気にすんなよ。でも、それだけ泣いたらすっきりしただろ。」
「確かにそうだな。
ずっとずっと、気に病んでたんだ。
妻やカトリーヌ、そして生まれた子に申し訳ないって…」
「あんたのしたことは良くないことだが、もううんと昔のことだ。
きっと、奥さん達も許してくれてるさ。
だからこそ、カトリーヌはあんたを探したんじゃないか?」
「いや、俺のしたことは一生許されるもんじゃない。
俺は、何の償いも出来てないんだからな。」
今の彼には何を言っても無駄だろう。
無責任な者は困るが、こんなに自分を責める者も厄介だ。
確かに、ドミニクは悪い事をした。
しかし、二十年も経てば、大概のことは許されるのではないだろうか。
特に、彼のように十分に反省しているのならなおのこと。
だが、彼はそうは思っていないようだ。
「ちょっと顔を洗ってくる。」
「あぁ、わかった。」
ドミニクの後ろ姿をみつめながら、リュックは大きな溜め息を吐いた。
「どうした?」
「いや、なんというか…生きるのが下手な男だなと思ってな。」
リュックの言わんとすることは、なんとなく察しがついた。
「悪いのはアイツだけど、あの嘆き悲しむ様子を見てたら、なんだか気の毒になって来ちまった。」
「なぜ、すぐに許しを請わなかったんだろうな。」
「だから、そこが生きるのが下手な所以じゃないか。」
「……なるほどな。」
ドミニクは決して悪い男ではない。
若い頃には、誰しも過ちを犯すものだ。
私だって、いくつもの間違いを犯してきた。
それをなかったことには出来ないが、すべて引き摺っていたら、前を向いて生きてはいけない。
まさに、リュックの言う通り、生きるのが下手な男だ。
「困ったもんだな。」
「とりあえず少しでも元気付けてやろうじゃないか。」
しばらくすると、どこか照れくさそうな顔をしたドミニクが戻って来た。
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