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065 : 威風堂々
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ロアンヌは、我慢しきれなくなったのか、大きな声を上げて笑った。
私とリュックは、そんなロアンヌに為す術なく、唖然としていた。
「何を驚いておる。わしは千里眼だと言ったじゃろう。」
「そ、そうだったな。
実は、今日は俺たちのことじゃなくて、知り合いのことで来たんだけど、そういうのもわかるかい?」
「その知り合いのことを考えるんじゃ。
姿かたちもしっかりとな。」
「あ、ああ、わかった。」
リュックは、静かに目を瞑った。
「ほう、若い娘じゃな。
おや、伏せっておるのか?」
私とリュックは再び顔を見合わせた。
ロアンヌには、カトリーヌが見えたのだろうか?
「そ、そうなんだ、まさにその通り。
カトリーヌっていう女性なんだけど、実はここに来る途中、崖から落ちたんだ。」
「なんと、崖から?
よく助かった……なるほど、男が助けてくれたんじゃな。」
「そうなんだ。
それで、カトリーヌは…」
「皆まで言うな。
……ふむ。わかった。
人を探しているのじゃな。
なるほど。昔別れた父親か。」
ロアンヌの千里眼は大したものだ。
この場にカトリーヌはいない。
リュックが頭に思い描いたカトリーヌを見ただけで、彼女の悩み事まで当ててしまうとは!
そもそも、リュックの頭の中のカトリーヌを見てしまうこと自体、信じられないことなのだが。
「ちょっと、待てよ。
……父親は、この近くにいたことがあるようだが…そう、今は違う。
海辺だ。
白い灯台が見える…
ここから南だ。
そう近くは無いが、遠いという程でもない。
歩いていけば、一週間から十日はかかるかもしれないな。
その男は漁師をしている。」
「あ、ありがとう!助かったぜ。」
リュックは立ち上がった。
「おい、帰るわけじゃないだろうな。」
「え?あ、あぁ、見料か、それなら…」
「違う。まだ酒盛りは始まったばかりじゃ。」
「あ……」
リュックは決まりの悪い顔をして私を見た。
私はゆっくりと頷いた。
すぐにでも、カトリーヌに教えてやりたいというリュックの気持ちはよくわかる。
だが、ロアンヌは恩人なのだから、もう少し付き合ってやるしかない。
「……そうだな。よし、飲もう。
キャサリン、酒はまだあるのか?」
「はい、た~んと。」
ロアンヌは、機嫌の良い顔をして微笑んでいる。
どうやら、長い酒盛りになりそうだ。
私とリュックは、そんなロアンヌに為す術なく、唖然としていた。
「何を驚いておる。わしは千里眼だと言ったじゃろう。」
「そ、そうだったな。
実は、今日は俺たちのことじゃなくて、知り合いのことで来たんだけど、そういうのもわかるかい?」
「その知り合いのことを考えるんじゃ。
姿かたちもしっかりとな。」
「あ、ああ、わかった。」
リュックは、静かに目を瞑った。
「ほう、若い娘じゃな。
おや、伏せっておるのか?」
私とリュックは再び顔を見合わせた。
ロアンヌには、カトリーヌが見えたのだろうか?
「そ、そうなんだ、まさにその通り。
カトリーヌっていう女性なんだけど、実はここに来る途中、崖から落ちたんだ。」
「なんと、崖から?
よく助かった……なるほど、男が助けてくれたんじゃな。」
「そうなんだ。
それで、カトリーヌは…」
「皆まで言うな。
……ふむ。わかった。
人を探しているのじゃな。
なるほど。昔別れた父親か。」
ロアンヌの千里眼は大したものだ。
この場にカトリーヌはいない。
リュックが頭に思い描いたカトリーヌを見ただけで、彼女の悩み事まで当ててしまうとは!
そもそも、リュックの頭の中のカトリーヌを見てしまうこと自体、信じられないことなのだが。
「ちょっと、待てよ。
……父親は、この近くにいたことがあるようだが…そう、今は違う。
海辺だ。
白い灯台が見える…
ここから南だ。
そう近くは無いが、遠いという程でもない。
歩いていけば、一週間から十日はかかるかもしれないな。
その男は漁師をしている。」
「あ、ありがとう!助かったぜ。」
リュックは立ち上がった。
「おい、帰るわけじゃないだろうな。」
「え?あ、あぁ、見料か、それなら…」
「違う。まだ酒盛りは始まったばかりじゃ。」
「あ……」
リュックは決まりの悪い顔をして私を見た。
私はゆっくりと頷いた。
すぐにでも、カトリーヌに教えてやりたいというリュックの気持ちはよくわかる。
だが、ロアンヌは恩人なのだから、もう少し付き合ってやるしかない。
「……そうだな。よし、飲もう。
キャサリン、酒はまだあるのか?」
「はい、た~んと。」
ロアンヌは、機嫌の良い顔をして微笑んでいる。
どうやら、長い酒盛りになりそうだ。
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