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063 : 声にならない
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「リュック!」
「クロワさん…」
次の日、クロワとクロードが診療所に姿を現した。
「カトリーヌさんは無事だったのね!」
「……まぁな。ただ、意識が長い間戻らないみたいだ。」
「まぁ、意識が……」
みんながみつめる中、カトリーヌは無邪気な顔ですやすやと眠っていた。
「リュック、宿は取ったの?」
「いや、まだだ。」
「じゃあ、食事は?」
リュックは首を振った。
クロワの今の言葉で、私達は昨夜から何も飲まず食わずだったことに気が付いた。
「じゃあ、あなた達はまず何か食べてきて。
私がここにいますから。」
マーフィは気乗りしないようだったが、私達は、クロワに追い立てられるようにして部屋を出た。
「言われてみれば、確かに腹が減ったな。
もう昼近いんだから、当たり前か。」
リュックは、マーフィの背中を叩いたが、マーフィは暗く沈んだまま、何の反応も示さなかった。
「あそこにしようか。」
私達は、診療所から程近い、小さなレストランに入った。
「さぁ、食べよう。」
リュックは、わざと明るい声を出してるようだった。
落ち込んでいるマーフィを少しでも励ましたいのだろう。
「カトリーヌはきっと良くなるよ。」
「でも、先生が…」
「マーフィ、先生は可能性のひとつを言ったに過ぎない。
一生目覚めない可能性がある反面、目覚める可能性だってあるんだ。
昨夜、リュックが言った通り、私達は最初カトリーヌがすでに亡くなってるんだと思っていた。
だけど、カトリーヌはああして生きていたし、体には問題ないと言われた。
絶望することなんて、全然ないと思うが。」
「ですが……」
「俺達は、長い間旅をして、いくつもの奇跡を見てきた。
俺は信じてるぜ。また今回も奇跡が起きるって。
カトリーヌはきっと目を覚ますさ。」
「リュックさん、本当に…本当にそう思いますか?」
「あぁ。」
マーフィは、潤んだ瞳を伏せ、リュックの両手を握り締めた。
「クロワさん…」
次の日、クロワとクロードが診療所に姿を現した。
「カトリーヌさんは無事だったのね!」
「……まぁな。ただ、意識が長い間戻らないみたいだ。」
「まぁ、意識が……」
みんながみつめる中、カトリーヌは無邪気な顔ですやすやと眠っていた。
「リュック、宿は取ったの?」
「いや、まだだ。」
「じゃあ、食事は?」
リュックは首を振った。
クロワの今の言葉で、私達は昨夜から何も飲まず食わずだったことに気が付いた。
「じゃあ、あなた達はまず何か食べてきて。
私がここにいますから。」
マーフィは気乗りしないようだったが、私達は、クロワに追い立てられるようにして部屋を出た。
「言われてみれば、確かに腹が減ったな。
もう昼近いんだから、当たり前か。」
リュックは、マーフィの背中を叩いたが、マーフィは暗く沈んだまま、何の反応も示さなかった。
「あそこにしようか。」
私達は、診療所から程近い、小さなレストランに入った。
「さぁ、食べよう。」
リュックは、わざと明るい声を出してるようだった。
落ち込んでいるマーフィを少しでも励ましたいのだろう。
「カトリーヌはきっと良くなるよ。」
「でも、先生が…」
「マーフィ、先生は可能性のひとつを言ったに過ぎない。
一生目覚めない可能性がある反面、目覚める可能性だってあるんだ。
昨夜、リュックが言った通り、私達は最初カトリーヌがすでに亡くなってるんだと思っていた。
だけど、カトリーヌはああして生きていたし、体には問題ないと言われた。
絶望することなんて、全然ないと思うが。」
「ですが……」
「俺達は、長い間旅をして、いくつもの奇跡を見てきた。
俺は信じてるぜ。また今回も奇跡が起きるって。
カトリーヌはきっと目を覚ますさ。」
「リュックさん、本当に…本当にそう思いますか?」
「あぁ。」
マーフィは、潤んだ瞳を伏せ、リュックの両手を握り締めた。
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