お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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060 : 手繰りよせたなら

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 「ちょっと!一体どういうことなのよ!」



 私達はまた数日をかけて、来た時と同じルートを引き返し、ひさしぶりに町に戻った。
 今度は行きとは違い、リータという同行者が増えている。
もちろん、端からすんなんりとうまくいく等とは考えてはいなかったが、リータの顔を見るなり、エヴァは目を吊り上げ大きな声で私達を怒鳴り付けたのには、いささか驚いた。



 「あのな…実は……」

 「なかなか戻って来ないから心配してたら、何なんだよ!
……酷いじゃないか!」

 「だからな…」

 「帰っとくれ!
あんた達にディヴィッドを任せたのは間違いだったよ!
さ、ディヴィッド、こっちに来るんだよ!」

エヴァは、リュックに話す機会を一切与えず、怒りのおさまらない様子で乱暴にディヴィッドの手首を掴む。



 「……待って、母さん。」

 「おだまり!」

 「母さん…ちょっとだけ……」

 「黙れって言ってるだろ!」

 感情的な叫び声と共に上げられた手をリータが掴み、その頬をもう片方の手で叩いた。
 景気の良い音が部屋の中に響き、ディヴィッドは驚いたような顔をしたまま、動きを止めて二人をじっとみつめる。



 「あんたって子は……」

そう言うと、リータはエヴァの身体を引き寄せ、強く抱き締めた。



 「……会いたかった…エヴァ……
あれから、どれだけ探したことか……」

 小さな声で呟くリータの瞳からは、一筋の涙が流れ出す。



 「……母さん……」

 意外なことに、今度はエヴァが涙を流していた。
 私もリュックも思い掛けないこの展開に、ただただ顔を見合わせ戸惑うばかりだった。
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