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059 : 野辺の送り
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「そうか…きっと、とっても良いおばあちゃんだったんだな。」
リュックは、ディヴィッドの肩を叩き、ハンカチで涙を拭った。
「でも…おまえ、今までおばあちゃんのことなんて一言も言わなかったじゃないか。
どうして黙ってたんだ?」
「……母さんが…おばあちゃんのことは話しちゃいけないって……
おばあちゃんはもういないんだから…これからは、二人で生きていかなきゃならないんだから、おばあちゃんのことはもう思い出すのもだめだって……」
「もう、あの子ったら…!!」
リータは、唇を噛み、拳を握り締めた。
「そうだったのか……
そりゃあ、辛かったな……」
リュックは、ディヴィッドの小さな肩を抱き締め、ディヴィッドの瞳にはまたあらたな涙が溢れ出した。
「リュックさん…本当によく来て下さったわ。
私……あの子に会います!
あの子に言いたいことがいっぱいあるんですもの!」
「あ…母さんは悪くないんだ!
おばあちゃんが死んじゃった後、僕が泣いてばっかりだったから…
だから、それで母さんは……」
「ディヴィッド……
あなたは何も悪くないのよ。
エヴァが……あなたのお母さんが間違ってるの。
おばあちゃんのことだって、思い出しても話しても良いのよ。」
「でも……」
ディヴィッドは、皆に促されても、まだエヴァとの約束にこだわっているらしく、どうして良いのかわからない様子で、俯いてしまった。
「リータさんの言う通りだぞ。
亡くなった人を思い出すのは悪いことなんかじゃない。
なぁ、ディヴィッド……どんなおばあちゃんだったんだ?
教えてくれよ。」
リュックが声をかけても、ディヴィッドはまだ決心が着かないらしく、俯いたまま黙りこくっていた。
ディヴィッドの胸の痛みがわかるだけに、どんな風に接してやれば良いのかと大人達は考え、長い沈黙が部屋の中の雰囲気を重く沈ませる。
(……そうだ)
「ディヴィッド…さっきの花冠……シュリー達がすごく感心してたが……
もしかしたら、あれはおばあさんに作り方を習ったのか?」
私は不意に思い着いたことをそのまんま口にした。
「え……?」
俯いていたディヴィッドが、私の問い掛けにようやく反応した。
「とても上手に作っていたな。
ディヴィッドは手先が器用なんだな。」
「……うん。
おばあちゃんも同じこと言ってくれた。
裏山の花畑でおばあちゃんに教えてもらってよく作ったんだ。」
「まぁ、ディヴィッドは花冠が作れるの?
私にもぜひ作ってほしいわ。」
「うん、良いよ。
明日作ってあげる。」
ディヴィッドの顔に、子供らしい笑顔が戻り、それを見た私達の間にも微笑が広がった。
リュックは、ディヴィッドの肩を叩き、ハンカチで涙を拭った。
「でも…おまえ、今までおばあちゃんのことなんて一言も言わなかったじゃないか。
どうして黙ってたんだ?」
「……母さんが…おばあちゃんのことは話しちゃいけないって……
おばあちゃんはもういないんだから…これからは、二人で生きていかなきゃならないんだから、おばあちゃんのことはもう思い出すのもだめだって……」
「もう、あの子ったら…!!」
リータは、唇を噛み、拳を握り締めた。
「そうだったのか……
そりゃあ、辛かったな……」
リュックは、ディヴィッドの小さな肩を抱き締め、ディヴィッドの瞳にはまたあらたな涙が溢れ出した。
「リュックさん…本当によく来て下さったわ。
私……あの子に会います!
あの子に言いたいことがいっぱいあるんですもの!」
「あ…母さんは悪くないんだ!
おばあちゃんが死んじゃった後、僕が泣いてばっかりだったから…
だから、それで母さんは……」
「ディヴィッド……
あなたは何も悪くないのよ。
エヴァが……あなたのお母さんが間違ってるの。
おばあちゃんのことだって、思い出しても話しても良いのよ。」
「でも……」
ディヴィッドは、皆に促されても、まだエヴァとの約束にこだわっているらしく、どうして良いのかわからない様子で、俯いてしまった。
「リータさんの言う通りだぞ。
亡くなった人を思い出すのは悪いことなんかじゃない。
なぁ、ディヴィッド……どんなおばあちゃんだったんだ?
教えてくれよ。」
リュックが声をかけても、ディヴィッドはまだ決心が着かないらしく、俯いたまま黙りこくっていた。
ディヴィッドの胸の痛みがわかるだけに、どんな風に接してやれば良いのかと大人達は考え、長い沈黙が部屋の中の雰囲気を重く沈ませる。
(……そうだ)
「ディヴィッド…さっきの花冠……シュリー達がすごく感心してたが……
もしかしたら、あれはおばあさんに作り方を習ったのか?」
私は不意に思い着いたことをそのまんま口にした。
「え……?」
俯いていたディヴィッドが、私の問い掛けにようやく反応した。
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ディヴィッドは手先が器用なんだな。」
「……うん。
おばあちゃんも同じこと言ってくれた。
裏山の花畑でおばあちゃんに教えてもらってよく作ったんだ。」
「まぁ、ディヴィッドは花冠が作れるの?
私にもぜひ作ってほしいわ。」
「うん、良いよ。
明日作ってあげる。」
ディヴィッドの顔に、子供らしい笑顔が戻り、それを見た私達の間にも微笑が広がった。
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