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056 : 砂上の夢
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私達は、エヴァに関する情報を知りうる限りすべてリータにぶちまけた。
特にリュックは、私が知らなかったこともいろいろと知っており、それを聞く限り、彼女が相当な苦労を重ねて来たのだとわかった。
「そうだったの……
じゃあ、今はまだ落ち付いてる方なのね?」
「その通りだな。
男の残した借金を返すまでは、もっと大変だったみたいだ。
なんでも、その男はディヴィッドを里子に出して、エヴァのことを商売女にしようとしたらしく、それでエヴァもすっかり熱が冷めたらしいんだ。
だけど、別れるなら借金を清算しろって言い出したらしくてな……」
「全く、なんて酷い男なんだろう!!
初めて会った時から、胡散臭い男だとは思ってたけど、そこまで酷いとは……」
リータはそう言いながら、悔しそうに唇を噛み締めた。
「ところで、エヴァとその男は一体なんで知り合ったんだ?」
「……エヴァはね…この村のことを嫌ってたのよ。
ここには何もないってね。
あの子の父親は、記憶にも残らない程、あの子が小さな時に事故で死んだの。
元々、彼の両親は私の事を気に入ってなかったから、彼が死んだことまで私のせいみたいな言い方をされて、家も追い出されたの…
彼の両親は、彼を町長さんの娘さんと結婚させるつもりだったらしくってね…
それなのに、私みたいに何の取り柄もない女を選んだんだから、気に入らないのも当然よね。
だから、彼は家を出て、私達は少し離れた町で暮らしていたのよ。
それから、私はエヴァを連れ、仕事を探していくつかの町をさ迷って…でも、なかなか仕事はみつからなかった。
そんな時、たまたま知り合ったワトソンさんが、この村の人で、ここには空き家もあるし自分で作物を作れば親子二人くらいなんとでも食べていけるって、連れて来て下さったの。
あの時、ワトソンさんに出会わなければ、私達は今この世にはいなかったかもしれないわ……」
遠い日を懐かしむかのように、そう話したリータの瞳には、うっすらと光る物が溜まっていた。
私達は、エヴァに関する情報を知りうる限りすべてリータにぶちまけた。
特にリュックは、私が知らなかったこともいろいろと知っており、それを聞く限り、彼女が相当な苦労を重ねて来たのだとわかった。
「そうだったの……
じゃあ、今はまだ落ち付いてる方なのね?」
「その通りだな。
男の残した借金を返すまでは、もっと大変だったみたいだ。
なんでも、その男はディヴィッドを里子に出して、エヴァのことを商売女にしようとしたらしく、それでエヴァもすっかり熱が冷めたらしいんだ。
だけど、別れるなら借金を清算しろって言い出したらしくてな……」
「全く、なんて酷い男なんだろう!!
初めて会った時から、胡散臭い男だとは思ってたけど、そこまで酷いとは……」
リータはそう言いながら、悔しそうに唇を噛み締めた。
「ところで、エヴァとその男は一体なんで知り合ったんだ?」
「……エヴァはね…この村のことを嫌ってたのよ。
ここには何もないってね。
あの子の父親は、記憶にも残らない程、あの子が小さな時に事故で死んだの。
元々、彼の両親は私の事を気に入ってなかったから、彼が死んだことまで私のせいみたいな言い方をされて、家も追い出されたの…
彼の両親は、彼を町長さんの娘さんと結婚させるつもりだったらしくってね…
それなのに、私みたいに何の取り柄もない女を選んだんだから、気に入らないのも当然よね。
だから、彼は家を出て、私達は少し離れた町で暮らしていたのよ。
それから、私はエヴァを連れ、仕事を探していくつかの町をさ迷って…でも、なかなか仕事はみつからなかった。
そんな時、たまたま知り合ったワトソンさんが、この村の人で、ここには空き家もあるし自分で作物を作れば親子二人くらいなんとでも食べていけるって、連れて来て下さったの。
あの時、ワトソンさんに出会わなければ、私達は今この世にはいなかったかもしれないわ……」
遠い日を懐かしむかのように、そう話したリータの瞳には、うっすらと光る物が溜まっていた。
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