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048 : 数珠つなぎ
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*
「重いだろ?
大丈夫かい?」
「あぁ、大丈夫だ。
こう見えても、俺はこういう仕事には慣れてるんだ。」
酒瓶をいっぱい載せた荷車を引くリュックの脇を、彼とさほど変わらない年であろう若い女が並行して歩く。
「あんたも店が焼けたのかい?」
「いや、俺はあの町の者じゃないんだ。」
「え…それじゃあ、手伝いに来てるってことかい?
あの町に知り合いか誰かいるの?」
「そういうわけでもないんだけどな……
なんていうか……ま、なりゆきみたいなもんだな……」
リュックは息の上がる中、律儀に彼女の問いかけに答えた。
「知り合いもいない町のことを、なりゆきで手伝ってるっていうのかい?
……あんた、信じられない程のお人良しなんだね。」
「……そうかもな。」
苦笑いを浮かべながら答えるリュックに、女性も同じように微笑んだ。
*
「あそこだ。」
リュックは流れる汗を手の甲で拭いながら、町外れの酒場を指差した。
「前の主人はなんだってこんな所に酒場を作ったんだろうね。
こんなへんぴな所に作るから潰れたんじゃないかい?」
「さぁな…でも、こういう場所なら酔っ払いが遅くまで騒いでも苦情は来ないんじゃないか?」
「なるほど!……あんた、なかなか頭が良いじゃないか。」
女性は笑いながら、リュックの背中を景気良く叩いた。
「……わ、すごい汗だ。
そりゃそうだ、この量だもんね。」
女性は、あらためて荷車に並べられた酒瓶をみつめる。
「さ、店に入ったら、片付けやらなんやらでまた忙しいぜ。
早くやっちまおうぜ!」
「そうだね。あ……」
二人がみつめる中、不意に酒場の扉が開き、中から出て来たマルタンがリュックと女性をみつけて大きく手を振った。
「あ、マルタン!
来てくれてたのか!」
「あの人、あんたの知り合いなのかい?」
「あぁ、俺の親友なんだ。」
「重いだろ?
大丈夫かい?」
「あぁ、大丈夫だ。
こう見えても、俺はこういう仕事には慣れてるんだ。」
酒瓶をいっぱい載せた荷車を引くリュックの脇を、彼とさほど変わらない年であろう若い女が並行して歩く。
「あんたも店が焼けたのかい?」
「いや、俺はあの町の者じゃないんだ。」
「え…それじゃあ、手伝いに来てるってことかい?
あの町に知り合いか誰かいるの?」
「そういうわけでもないんだけどな……
なんていうか……ま、なりゆきみたいなもんだな……」
リュックは息の上がる中、律儀に彼女の問いかけに答えた。
「知り合いもいない町のことを、なりゆきで手伝ってるっていうのかい?
……あんた、信じられない程のお人良しなんだね。」
「……そうかもな。」
苦笑いを浮かべながら答えるリュックに、女性も同じように微笑んだ。
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「あそこだ。」
リュックは流れる汗を手の甲で拭いながら、町外れの酒場を指差した。
「前の主人はなんだってこんな所に酒場を作ったんだろうね。
こんなへんぴな所に作るから潰れたんじゃないかい?」
「さぁな…でも、こういう場所なら酔っ払いが遅くまで騒いでも苦情は来ないんじゃないか?」
「なるほど!……あんた、なかなか頭が良いじゃないか。」
女性は笑いながら、リュックの背中を景気良く叩いた。
「……わ、すごい汗だ。
そりゃそうだ、この量だもんね。」
女性は、あらためて荷車に並べられた酒瓶をみつめる。
「さ、店に入ったら、片付けやらなんやらでまた忙しいぜ。
早くやっちまおうぜ!」
「そうだね。あ……」
二人がみつめる中、不意に酒場の扉が開き、中から出て来たマルタンがリュックと女性をみつけて大きく手を振った。
「あ、マルタン!
来てくれてたのか!」
「あの人、あんたの知り合いなのかい?」
「あぁ、俺の親友なんだ。」
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