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046 : 昼下がり
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「あいつがそんなことを……!」
「……ええ。
あんな幼い頃から、そういう志を持ってくれる子供がいるなんて、ありがたいことじゃないですか。」
カールは、母親の看病をしながら診療所で暮らすうちに、医師になりたいと話すようになったのだという。
それで、クロードはカールを専門の学校に通わせ、医師への道を進めるように、院長に話を付けて来たとのことだった。
それはとても良いことだと思うが、クロードの行動にしてはなにか違う気がした。
「そりゃあ良かった!
あいつが医者になったら、あいつの母ちゃんも天国でさぞかし喜んでくれるだろうぜ。」
リュックはそんなことは少しも気にしていないようだったので、私もつまらないことは考えないことにした。
「リュックの言う通りですね。」
「……あんな小さな子供の話をまともに聞くなんてどうかしてますよね。」
「い、いえ、そんなことは……」
クロードが私の感じていることを急に口にしたことで、まるで心の中を見透かされたような気分になり、私はいささかの焦りを感じた。
「僕自身も少し不思議な気がするんですよ。
でも……今回はどうしても、そうしたかったんです。」
「そうですか……それなら、なさったことはきっと正解ですよ。」
「……ありがとうございます。」
本来は冷静な彼が、少しずつ変わって来ていることを私は感じた。
それは、きっと一緒に旅をしているクロワやリュックのせいだろう。
困ってる人をみると、何も考えずに手を差し伸べるあの二人には、私も少なからず影響を受けている。
「ここにいると、なんだか気持ち良くて眠くなってくるな…」
柔らかな日差しに手をかざし、リュックは大きな口を開けてあくびをする。
「クロワさんにお菓子でも買って帰りましょうか。
確か、この先にこ洒落たお菓子屋さんがありましたね。」
「あ、あそこのケーキ、じいさんも好きなんだ。
買っていってやると喜ぶぞ。」
リュックはそう言いながら、すでに立ち上がっていた。
本当に彼は気が早い。
なんとなく満ち足りた気持ちを感じながら、私達は日当たりの良いテラス席を後にした。
「あいつがそんなことを……!」
「……ええ。
あんな幼い頃から、そういう志を持ってくれる子供がいるなんて、ありがたいことじゃないですか。」
カールは、母親の看病をしながら診療所で暮らすうちに、医師になりたいと話すようになったのだという。
それで、クロードはカールを専門の学校に通わせ、医師への道を進めるように、院長に話を付けて来たとのことだった。
それはとても良いことだと思うが、クロードの行動にしてはなにか違う気がした。
「そりゃあ良かった!
あいつが医者になったら、あいつの母ちゃんも天国でさぞかし喜んでくれるだろうぜ。」
リュックはそんなことは少しも気にしていないようだったので、私もつまらないことは考えないことにした。
「リュックの言う通りですね。」
「……あんな小さな子供の話をまともに聞くなんてどうかしてますよね。」
「い、いえ、そんなことは……」
クロードが私の感じていることを急に口にしたことで、まるで心の中を見透かされたような気分になり、私はいささかの焦りを感じた。
「僕自身も少し不思議な気がするんですよ。
でも……今回はどうしても、そうしたかったんです。」
「そうですか……それなら、なさったことはきっと正解ですよ。」
「……ありがとうございます。」
本来は冷静な彼が、少しずつ変わって来ていることを私は感じた。
それは、きっと一緒に旅をしているクロワやリュックのせいだろう。
困ってる人をみると、何も考えずに手を差し伸べるあの二人には、私も少なからず影響を受けている。
「ここにいると、なんだか気持ち良くて眠くなってくるな…」
柔らかな日差しに手をかざし、リュックは大きな口を開けてあくびをする。
「クロワさんにお菓子でも買って帰りましょうか。
確か、この先にこ洒落たお菓子屋さんがありましたね。」
「あ、あそこのケーキ、じいさんも好きなんだ。
買っていってやると喜ぶぞ。」
リュックはそう言いながら、すでに立ち上がっていた。
本当に彼は気が早い。
なんとなく満ち足りた気持ちを感じながら、私達は日当たりの良いテラス席を後にした。
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