お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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045 : 盗み聞きの値段

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「兄さん…」

 「じゃ…じゃあ、どうすれば良いって言うんだ?
 俺達には何も出来ないのか?
ただ、母さんが弱って死んでいくのを見てるしかないっていうのか!?」

 両手を掴み、兄は潤んだ瞳を真っ直ぐに向けて弟に訴えた。



 「兄さん…あの薬草…
バーレンさんに持って行ったらどうだろう?」

 「バーレンって…薬屋のバーレンさんのことか?」

 兄の質問にカールは黙って頷く。



 「何言ってるんだ。
あそこには、まだ薬代の借金がたくさんあるんだぞ。
だから、最近は薬もなかなか譲ってもらえない。
そんな所に持って行っても、うまくいってせいぜい借金を減らしてもらえるだけのことだ。」

 「でも、借金が減るのは良いことだよ。
バーレンさんなら、薬草を悪いことには使うことはないだろうし、きっと辛い病気の人のためになる薬を作ってくれる。
それに、あの人なら薬草の代金を借金から差し引いてくれるわけじゃなくて、母さんの薬も少し分けてもらえると思うんだ。」

カールは兄の顔を見上げ、なだめるような口調で話した。



 「カール!おまえは何もわかってない!
……そりゃあ、母さんがあんなに酷い病気じゃなきゃ、それでも良いさ。
でも、母さんには時間がないんだ!
そんな悠長なことは言ってられない!
……そうだ…!やっぱり薬屋に売るのが良いな。
 大きな町の薬屋に持って行こう!
そしたら金がもらえるから、それですぐに母さんを医者に診せるんだ!
そうと決まれば早い方が良い!
カール、俺、今から薬草を採ってくる!」

そう言って今にも駆け出しそうな兄の腕を、カールの手が掴んだ。



 「待って、兄さん。
それなら僕が行くよ。
 兄さんは明日も仕事なんだ。
 少しはゆっくりしてて。」

 「でも…おまえ一人で大丈夫なのか?」

 「しょっちゅう行ってる場所だし、大丈夫だよ。
じゃあ、兄さん…母さんのこと、頼んだよ。」

カールは口許に小さな笑みを浮かべ、ランプとかごを手に粗末な玄関の扉を開いた。
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