217 / 389
043 : 雪の街
7
しおりを挟む
「そうだ…粉雪の木の下に彼女がいた。
泣きながら私に向かって手を伸ばしてきた。
私は怖くなって逃げようとして…それで…」
「……同じだ…」
「え…?」
「俺も同じ夢を見た。
いや、全く同じってわけじゃないんだが、俺が見た夢の中でも彼女は粉雪の木の下で泣いていた。
誰かに会いたいってそれを必死に言うんだが、その名前が聞き取れない。
俺は、何度もその名前を問いただしたんだが、最後までそれがわからないままに目が覚めたんだ。
あんたも同じ夢を見たってことは、やっぱり、彼女はこの街に関係があるってことなんだろうな。」
私には即答は出来なかった。
確かに、リュックの言う通りにも思える。
しかし、これほど珍しい木を見たのは初めてのことなのだから、それが記憶に強く残って、彼女の夢と混ざり合ってしまったということも考えられる。
やはり、まずは先入観を捨て、この街で何か事件がなかったかを聞きこむことから始めた方が良さそうだ。
この宿の老人なら、昔のことも知ってるだろうし、話好きでもありそうなので聞きこむには打って付けの人物だ。
そんなことを考えている時、不意に扉を叩く音が響いた。
「……こんな早くに誰だろう?」
リュックが出てみると、そこにいたのはクロワだった。
早く裏山に行きたくて仕方がないらしく、私達がもう起きてることを知ると安心して戻って行った。
「クロワさん、えらく張り切ってるな。
……だけど、どうする?
クロワさんはきっと一日中でも山にいたがると思うけど、俺達は早く切り上げて街の方で話でも聞いてみるか?」
「それなんだがな、リュック。
ここの老人に聞いてみたらどうだろう?
あの人なら、昔のこともよく知ってるんじゃないだろうか?」
「なるほど…そりゃそうだな。
あの爺さんはずっとこの街で育ってるようなこと言ってたし、クロワさんはほっといても一人で薬草でも摘んでるだろうし…あ、先生がいるか。
それじゃあ、なおさら心配ないな。
よし、そうしよう!
そうと決まれば、早く行こうぜ。
クロワさんが待ちわびてるだろうからな。」
「そうだな。」
今日の予定はすんなり決まり、私達は急いで食堂へ向かった。
泣きながら私に向かって手を伸ばしてきた。
私は怖くなって逃げようとして…それで…」
「……同じだ…」
「え…?」
「俺も同じ夢を見た。
いや、全く同じってわけじゃないんだが、俺が見た夢の中でも彼女は粉雪の木の下で泣いていた。
誰かに会いたいってそれを必死に言うんだが、その名前が聞き取れない。
俺は、何度もその名前を問いただしたんだが、最後までそれがわからないままに目が覚めたんだ。
あんたも同じ夢を見たってことは、やっぱり、彼女はこの街に関係があるってことなんだろうな。」
私には即答は出来なかった。
確かに、リュックの言う通りにも思える。
しかし、これほど珍しい木を見たのは初めてのことなのだから、それが記憶に強く残って、彼女の夢と混ざり合ってしまったということも考えられる。
やはり、まずは先入観を捨て、この街で何か事件がなかったかを聞きこむことから始めた方が良さそうだ。
この宿の老人なら、昔のことも知ってるだろうし、話好きでもありそうなので聞きこむには打って付けの人物だ。
そんなことを考えている時、不意に扉を叩く音が響いた。
「……こんな早くに誰だろう?」
リュックが出てみると、そこにいたのはクロワだった。
早く裏山に行きたくて仕方がないらしく、私達がもう起きてることを知ると安心して戻って行った。
「クロワさん、えらく張り切ってるな。
……だけど、どうする?
クロワさんはきっと一日中でも山にいたがると思うけど、俺達は早く切り上げて街の方で話でも聞いてみるか?」
「それなんだがな、リュック。
ここの老人に聞いてみたらどうだろう?
あの人なら、昔のこともよく知ってるんじゃないだろうか?」
「なるほど…そりゃそうだな。
あの爺さんはずっとこの街で育ってるようなこと言ってたし、クロワさんはほっといても一人で薬草でも摘んでるだろうし…あ、先生がいるか。
それじゃあ、なおさら心配ないな。
よし、そうしよう!
そうと決まれば、早く行こうぜ。
クロワさんが待ちわびてるだろうからな。」
「そうだな。」
今日の予定はすんなり決まり、私達は急いで食堂へ向かった。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
おっさん聖女!目指せ夢のスローライフ〜聖女召喚のミスで一緒に来たおっさんが更なるミスで本当の聖女になってしまった
ありあんと
ファンタジー
アラサー社会人、時田時夫は会社からアパートに帰る途中、女子高生が聖女として召喚されるのに巻き込まれて異世界に来てしまった。
そして、女神の更なるミスで、聖女の力は時夫の方に付与された。
そんな事とは知らずに時夫を不要なものと追い出す王室と神殿。
そんな時夫を匿ってくれたのは女神の依代となる美人女神官ルミィであった。
帰りたいと願う時夫に女神がチート能力を授けてくれるというので、色々有耶無耶になりつつ時夫は異世界に残留することに。
活躍したいけど、目立ち過ぎるのは危険だし、でもカリスマとして持て囃されたいし、のんびりと過ごしたいけど、ゆくゆくは日本に帰らないといけない。でも、この世界の人たちと別れたく無い。そんな時夫の冒険譚。
ハッピーエンドの予定。
なろう、カクヨムでも掲載
【完結】あなたの思い違いではありませんの?
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
複数の物語の登場人物が、一つの世界に混在しているなんて?!
「カレンデュラ・デルフィニューム! 貴様との婚約を破棄する」
お決まりの婚約破棄を叫ぶ王太子ローランドは、その晩、ただの王子に降格された。聖女ビオラの腰を抱き寄せるが、彼女は隙を見て逃げ出す。
婚約者ではないカレンデュラに一刀両断され、ローランド王子はうろたえた。近くにいたご令嬢に「お前か」と叫ぶも人違い、目立つ赤いドレスのご令嬢に絡むも、またもや否定される。呆れ返る周囲の貴族の冷たい視線の中で、当事者四人はお互いを認識した。
転生組と転移組、四人はそれぞれに前世の知識を持っている。全員が違う物語の世界だと思い込んだリクニス国の命運はいかに?!
ハッピーエンド確定、すれ違いと勘違い、複数の物語が交錯する。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/19……完結
2024/08/13……エブリスタ ファンタジー 1位
2024/08/13……アルファポリス 女性向けHOT 36位
2024/08/12……連載開始
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
大陸を制覇し、全盛を極めたアティン帝国を一夜にして滅ぼした『大災厄』―――正体のわからぬ大災害の話は、御伽噺として世に広まっていた。
うっかり『大災厄』の正体を知った魔術師――ルリアージェ――は、大陸9つの国のうち、3つの国から追われることになる。逃亡生活の邪魔にしかならない絶世の美形を連れた彼女は、徐々に覇権争いに巻き込まれていく。
まさか『大災厄』を飼うことになるなんて―――。
真面目なようで、不真面目なファンタジーが今始まる!
【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう
※2022/05/13 第10回ネット小説大賞、一次選考通過
※2019年春、エブリスタ長編ファンタジー特集に選ばれました(o´-ω-)o)ペコッ
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる