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042 : 夢と現実の間
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「そうだったのか…それは、大変だったな。
それで、君は、やっぱり今回もなんとかその女性を救ってやろうと思うわけだな?」
「救う?
どこの誰ともわからないその人を俺に救うことなんて出来るわけないじゃないか。」
「リュック…忘れたのか?
あの枯れ井戸のことを…」
「枯れ井戸…?あ…あぁ…そんなことがあったな。
だけど、あの時も俺は別に何も…あ、花を手向けただけだぜ。」
「そうだな…
君がやったことは確かにそれだけかもしれないが、おそらくそれだけではないんだろうな。」
「一体、どういうことなんだ!?
もっとわかりやすく話してくれよ。」
そう言われ、私は失笑した。
確かに彼の言う通りだ。
私は思った通りのことを言っただけなのだが、それがどういうことなのか説明することは難しい。
なにしろそれはとても情緒的なことで、私自身はっきりと認識しているわけではないのだから。
ただ…直感のようなもので、リュックの意志に関わらず、彼はまた知らず知らずのうちに彼女を助けることになるだろうという予感はあった。
降り続く突然の雨がまさにその証ではないか…
「……マルタン、どうしたんだ?
雨がどうかしたのか?」
「……いや、よく降る雨だと思ってな。
まぁ、とにかく君は特になにかをしなくても良いと思う。
しなくてもすることになるんだ。」
「……またそれか……」
リュックは、うんざりしたように小さな溜め息を漏らし、グラスの酒を継ぎ足した。
*
「すまなかったな…」
「いいわよ、別に急ぐ旅じゃないんですもの。」
雨は昼過ぎにはほぼ上がったが、その頃、私とリュックは泥酔し眠りこけていた。
クロワはそんな私達を無理に起こすことはなく、結局、その日のうちの出発はなくなった。
「それにしても、朝から酒盛りなんてどうかしたの…?」
「いや…それは…特になんてことはないんだが…」
リュックの返答は、やけに歯切れが悪い。
「雨の日はどうしても気が沈みがちだから、飲んで少し盛り上げようと思いましてね。
それがつい飲み過ぎただけのことです。」
私の出した助け船に、リュックは頷き嬉しそうに微笑んだ。
それで、君は、やっぱり今回もなんとかその女性を救ってやろうと思うわけだな?」
「救う?
どこの誰ともわからないその人を俺に救うことなんて出来るわけないじゃないか。」
「リュック…忘れたのか?
あの枯れ井戸のことを…」
「枯れ井戸…?あ…あぁ…そんなことがあったな。
だけど、あの時も俺は別に何も…あ、花を手向けただけだぜ。」
「そうだな…
君がやったことは確かにそれだけかもしれないが、おそらくそれだけではないんだろうな。」
「一体、どういうことなんだ!?
もっとわかりやすく話してくれよ。」
そう言われ、私は失笑した。
確かに彼の言う通りだ。
私は思った通りのことを言っただけなのだが、それがどういうことなのか説明することは難しい。
なにしろそれはとても情緒的なことで、私自身はっきりと認識しているわけではないのだから。
ただ…直感のようなもので、リュックの意志に関わらず、彼はまた知らず知らずのうちに彼女を助けることになるだろうという予感はあった。
降り続く突然の雨がまさにその証ではないか…
「……マルタン、どうしたんだ?
雨がどうかしたのか?」
「……いや、よく降る雨だと思ってな。
まぁ、とにかく君は特になにかをしなくても良いと思う。
しなくてもすることになるんだ。」
「……またそれか……」
リュックは、うんざりしたように小さな溜め息を漏らし、グラスの酒を継ぎ足した。
*
「すまなかったな…」
「いいわよ、別に急ぐ旅じゃないんですもの。」
雨は昼過ぎにはほぼ上がったが、その頃、私とリュックは泥酔し眠りこけていた。
クロワはそんな私達を無理に起こすことはなく、結局、その日のうちの出発はなくなった。
「それにしても、朝から酒盛りなんてどうかしたの…?」
「いや…それは…特になんてことはないんだが…」
リュックの返答は、やけに歯切れが悪い。
「雨の日はどうしても気が沈みがちだから、飲んで少し盛り上げようと思いましてね。
それがつい飲み過ぎただけのことです。」
私の出した助け船に、リュックは頷き嬉しそうに微笑んだ。
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