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040 : 嘲りの犠牲
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*
「イングリット、ただいま!」
久し振りに見たイングリットの顔は、幾分元気を取り戻したようにマーチンには思えた。
「大丈夫だった?
何か変わったことは?」
イングリットは首を振り、いつものようにメモに何事かを書き、マーチンの前に差し出した。
『ありがとう。
私なら元気よ。
それより、ビルの手掛かりはなにかみつかった?』
マーチンの表情に影が差し、その首をゆっくりと振った。
「……残念だけど、何も……すまなかった。
……イングリット…実は、今、すごくお腹がすいてるんだ。
家には何もないし、今日はご馳走してもらえないかな?」
イングリットは頷き、マーチンを家の中に招き入れた。
*
「ご馳走様。
とてもおいしかったよ。
急に無理を言ってすまなかったね。」
イングリットは微笑みながら、小さく手を振った。
「明日まで休みなんだ。
良かったら…庭の手入れの続きでもやろうか?」
イングリットは、少しの間を置いてゆっくりと頷く。
「ビルの日記に庭の手入れのことが書いてあったね。
あの通りにやろう。」
イングリットは再び頷いた。
「じゃあ、おやすみ、イングリット。」
帰ろうとしたマーチンの目の前に、イングリットは白い封筒に入った手紙を差し出す。
表に「マーチンへ」と書いてあるその封筒は、かなりの厚みを持っていた。
「これは…?」
イングリットは『家に帰ってから読んで』と書かれたメモを差し出す。
「わかったよ。
じゃあ、おやすみ。」
「イングリット、ただいま!」
久し振りに見たイングリットの顔は、幾分元気を取り戻したようにマーチンには思えた。
「大丈夫だった?
何か変わったことは?」
イングリットは首を振り、いつものようにメモに何事かを書き、マーチンの前に差し出した。
『ありがとう。
私なら元気よ。
それより、ビルの手掛かりはなにかみつかった?』
マーチンの表情に影が差し、その首をゆっくりと振った。
「……残念だけど、何も……すまなかった。
……イングリット…実は、今、すごくお腹がすいてるんだ。
家には何もないし、今日はご馳走してもらえないかな?」
イングリットは頷き、マーチンを家の中に招き入れた。
*
「ご馳走様。
とてもおいしかったよ。
急に無理を言ってすまなかったね。」
イングリットは微笑みながら、小さく手を振った。
「明日まで休みなんだ。
良かったら…庭の手入れの続きでもやろうか?」
イングリットは、少しの間を置いてゆっくりと頷く。
「ビルの日記に庭の手入れのことが書いてあったね。
あの通りにやろう。」
イングリットは再び頷いた。
「じゃあ、おやすみ、イングリット。」
帰ろうとしたマーチンの目の前に、イングリットは白い封筒に入った手紙を差し出す。
表に「マーチンへ」と書いてあるその封筒は、かなりの厚みを持っていた。
「これは…?」
イングリットは『家に帰ってから読んで』と書かれたメモを差し出す。
「わかったよ。
じゃあ、おやすみ。」
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