お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
76 / 389
005 : 歴史は繰り返す

しおりを挟む
「あの屋敷は、元々はこの町に住んでた貴族が建てたらしいんだ。
もうずいぶんと昔のことだけどな。
その貴族は…あの屋敷を見れば一目瞭然だが、たいそうな金持ちだったらしい。
だが、その家の放蕩息子が金を使い尽してついには屋敷を手放してしまったらしいんだ。
あんなどでかい屋敷を買う奴なんていないと思われていたが、その後、しばらくして大金持ちの商人が買い取ったらしい。
ところが、それをまたそこの馬鹿息子が財産を使い果たして手放す羽目になってしまったんだとよ。」

 「へぇ、そんなことが…
そんなことがあったんじゃ、ますます買い手はつかなくなりそうだな。」

 「……実はな…それだけじゃないんだ。」

 男は、意味ありげに声を潜めた。



 「商人一家は、世を儚んで…あの家の二階で…」

そう言いながら、男は首を締める動作をして見せた。
リュックはわずかに身をひき顔をしかめた。



 「だから、いまだに買い手がつかないんだ。
すごく安くなってるらしいんだけどな。
どうだ、あんた!
 買ってみたら?」

 「ば、馬鹿なこと言うなよ!
そんな薄気味悪い家、タダでもいらねぇよ。」

 「やっぱり、そうだよな。」

 男はそう言うと、リュックの背中を叩き、笑いながら去って行ってしまった。



 「なんだか胡散臭い話ですね…」

クロードが不意に口を開いた。



 「え…?じゃあ、今の話は…」

 「僕には本当のことはわかりませんが…古い屋敷に幽霊が出るという噂は、よくある話ではありませんか。
 放蕩息子が身代を食いつぶすという事もよくありますが、その後の話は作り話なんじゃないでしょうか。
そもそも、幽霊なんてものがこの世にいるとお思いですか?」

 「……俺はいると思うぜ。」

クロードは、丸い目をしてリュックの顔を見つめた。



 「それは意外ですね。
リュックさんはそういうものを信じる方だとは思ってませんでしたよ。」

 「俺は幽霊だけじゃなく…神様も悪魔も信じてるぜ。
それに、妖精や……小人もな。
この世界に住んでるのは、人間だけじゃないと思ってる。」

 「リュックさんはロマンチストなんですね。
 私はどうもその手のものが信じられない…
 ……現実的過ぎるんでしょうかね。」

 「先生はきっと職業柄そうならざるを得ないのですよ。
……リュック、そろそろ行こうか。」

この手の話は口論の種となってしまうことが意外と多い。
そのため、私はリュックに声をかけたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】見返りは、当然求めますわ

楽歩
恋愛
王太子クリストファーが突然告げた言葉に、緊張が走る王太子の私室。 伝統に従い、10歳の頃から正妃候補として選ばれたエルミーヌとシャルロットは、互いに成長を支え合いながらも、その座を争ってきた。しかし、正妃が正式に決定される半年を前に、二人の努力が無視されるかのようなその言葉に、驚きと戸惑いが広がる。 ※誤字脱字、勉強不足、名前間違い、ご都合主義などなど、どうか温かい目で(o_ _)o))

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

底辺おっさん異世界通販生活始めます!〜ついでに傾国を建て直す〜

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 学歴も、才能もない底辺人生を送ってきたアラフォーおっさん。  運悪く暴走車との事故に遭い、命を落とす。  憐れに思った神様から不思議な能力【通販】を授かり、異世界転生を果たす。  異世界で【通販】を用いて衰退した村を建て直す事に成功した僕は、国家の建て直しにも協力していく事になる。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【旧版】桃色恋華~永遠に奏でるメロディー~

美和優希
恋愛
貴女が旅立ってから3年 桃の花が咲き乱れる季節に 止まっていた時の音は 再びゆっくりと 甘い音色を奏で始めた *『桃色恋華』の続編です。* 『桃色恋華』を先に読んでいただくことをおすすめします。 ※この作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※初回公開・完結*2012.04.26~2012.06.23(他サイト) ※近い将来、本編とともにリメイク予定です。こちらはリメイク前のものになります。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

処理中です...