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003 : 障害と剣
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ニッキーのおかげで夕食は賑やかなものになったが、マノンは相変わらず浮かない顔をしていた。
まだ決心がつかないようだ。
むしろ、時が過ぎる毎にその悩みは深い迷いとなっているようで、ずいぶんと疲れて見えた。
もしかすると、夜もあまり眠れていないのではないだろうか…
心配にはなったが、言葉を交わす機会がないまま、私達は離れに戻った。
*
次の日、会場には前日の二割増し程の客が詰め掛けた。
単に仕事が休みの者が多いせいなのか、それとももうニッキーのことが噂になったのかはわからないが、昨日よりも会場の熱気が高まっていたことは間違いない。
会場の整備を終えて舞台裏に戻って来ると、控え室でニッキーが身体を慣らしている所だった。
「よぉ、マルタン!」
「ニッキー、早いじゃないか。
君が出るのは第二試合だろう?」
「あぁ、家にいても気になるし、ちょっと思いついた事もあってな。」
昨夜、あれだけ飲んだというのに、彼には酒が残っている様子は微塵も感じられない。
実に晴れやかな顔をしていた。
第一試合が始まると、ニッキーはリングの袖で一心に試合をみつめていた。
いつもの彼とは違い、とても真剣な眼差しだ。
だが、意外なことに、結果を見届ける前に彼は控え室に戻って行った。
第一試合の勝者は、ここらでも少し名の通った格闘家・カーターだった。
チャンピオンにもなったことがある男らしい。
残念ながら、十週勝ち抜きは出来なかったらしいのだが、その実力には定評がある。
年は三十半ばくらいに見える。
身長が高いが、そういう者のウィークポイントでありがちな足腰もしっかりしているようだ。
今日は、準決勝と決勝が続いて行われるわけなのだが、そういう意味では第二試合の勝者が一番辛い立場になる。
第二試合を終え、ほんの少しの休憩を挟んだだけで続けて試合をすることになるのだから。
もしも、次の試合でニッキーが勝てば、彼がその一番辛い立場での試合に挑む事になる。
彼は確かにスタミナもありそうだが、そんな過酷な条件の元ではカーターの方に分があるように思えた。
やがて、リュックがリングが上がり、ニッキーと対戦者の紹介が始まった。
まだ決心がつかないようだ。
むしろ、時が過ぎる毎にその悩みは深い迷いとなっているようで、ずいぶんと疲れて見えた。
もしかすると、夜もあまり眠れていないのではないだろうか…
心配にはなったが、言葉を交わす機会がないまま、私達は離れに戻った。
*
次の日、会場には前日の二割増し程の客が詰め掛けた。
単に仕事が休みの者が多いせいなのか、それとももうニッキーのことが噂になったのかはわからないが、昨日よりも会場の熱気が高まっていたことは間違いない。
会場の整備を終えて舞台裏に戻って来ると、控え室でニッキーが身体を慣らしている所だった。
「よぉ、マルタン!」
「ニッキー、早いじゃないか。
君が出るのは第二試合だろう?」
「あぁ、家にいても気になるし、ちょっと思いついた事もあってな。」
昨夜、あれだけ飲んだというのに、彼には酒が残っている様子は微塵も感じられない。
実に晴れやかな顔をしていた。
第一試合が始まると、ニッキーはリングの袖で一心に試合をみつめていた。
いつもの彼とは違い、とても真剣な眼差しだ。
だが、意外なことに、結果を見届ける前に彼は控え室に戻って行った。
第一試合の勝者は、ここらでも少し名の通った格闘家・カーターだった。
チャンピオンにもなったことがある男らしい。
残念ながら、十週勝ち抜きは出来なかったらしいのだが、その実力には定評がある。
年は三十半ばくらいに見える。
身長が高いが、そういう者のウィークポイントでありがちな足腰もしっかりしているようだ。
今日は、準決勝と決勝が続いて行われるわけなのだが、そういう意味では第二試合の勝者が一番辛い立場になる。
第二試合を終え、ほんの少しの休憩を挟んだだけで続けて試合をすることになるのだから。
もしも、次の試合でニッキーが勝てば、彼がその一番辛い立場での試合に挑む事になる。
彼は確かにスタミナもありそうだが、そんな過酷な条件の元ではカーターの方に分があるように思えた。
やがて、リュックがリングが上がり、ニッキーと対戦者の紹介が始まった。
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