お題小説2

ルカ(聖夜月ルカ)

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003 : 障害と剣

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疲れていたはずなのに、その晩はあまりよく眠れなかった。
いや、疲れ過ぎていたから眠れなかったのか…
とにかく、そんなわけでまだ疲れの取れない重い身体をひきずって私は会場に向かった。



 「マルタン、どうした?
えらく眠そうな顔して…」

 「昨夜、あんまり眠れなかったんだ…」

 「そうか…
まぁ、今日、明日の出し物は演芸だから、そんなに忙しくはないと思うぜ。」

 「そうだと良いんだがな…」

クロワとクロードは、今日は休みだ。
クロワは今日は家で薬の調合をするらしい。
クロードは足りなくなった備品を補充すると言って町に出かけた。



 会場に着いた私は、昨日との違いに戸惑ってしまった。

 「リュック、今日も催しがあるんだよな?」

 「今頃、何言ってるんだ?
だから来たんじゃないか。」

 「しかし、客が…」

 「開演にはまだまだ時間があるんだぜ。
こんな早くから来る奴なんてそういないさ。
 昨日が異常だったんだよ。」

 「……そうか…」



しばらく経って、リュックの言う事が本当だったとわかった。
ちらちらと外をのぞいていると、最初の客が来たのは開場の三十分程前だった。
 開場した時にも混乱はなく、スムーズに人が流れた。
 結局、客入りは八割弱といった所か…
昨日とは違い、子供連れの女性や老人の姿が目立つ。
 開演間近になっても場内からは昨日のような熱気は感じられない。
 裏方の仕事も特にこれといったものはなく、舞台袖からステージを見るゆとりまであった。



 「やっぱりマジックは子供にウケるな!」

 後ろから不意に声をかけられ、私ははっとして振り向いた。



 「あ、ジャックさん…
すみません!こんな所で油を売っていて…」

 「なぁに…演芸の日はこれといってすることはないから良いんだよ。
その分、格闘の日が忙しいからな。」

 「演芸の日はいつもこんな感じなんですか?」

 「そうだな。
 問題があるとしたら、たまぁに迷子が出るくらいのもんだ。
 舞台の変更もないしな。楽なもんさ。
 皆は、今、部屋でお茶を飲んでるよ。
 良かったら、あんたも来なよな!」

 「ありがとうございます。」

サボっていることを注意されるのかと思いきや、まるで逆の内容だっただけに私は安堵し気が抜けた。
 要するに、ここでの仕事は週の後半のみが忙しいということもはっきりとわかった。
ジャック達はそれがわかっているからこそ、前半はなるべく身体を休ませているのだろう。
 私も早くここのペースを掴まなければと考えながら、従業員の部屋へ向かった。 
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